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独占禁止法と知的財産法

 独占禁止法の正式な名称は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律です。この独占禁止法(いわゆる独禁法)が禁止するのは、‘私的独占’、‘不当な取引制限’、‘不公平な取引方法’となる行為です(独禁法第1条ほか)。したがって、この独禁法は、私的独占を禁止していますが、独占を禁止してはいません。

 他方の知的財産法は、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、著作権法のほか、種苗法や半導体集積回路の回路配置に関する法律、さらには不正競争防止法をも含む広い法概念です。これら知的財産法(いわゆる知財法)は、独占的な排他権を与えるという保護形態をとります。

 したがって、独占を禁止する独禁法と、独占を認める知財法とは相いれないのでは、という疑問が生まれるおそれがあります。しかし、二つの法概念に矛盾はなく、互いに補完しあう関係があるといわれます。知財法を専門にする者にとって、独禁法は身近ではなく、一般に親しみがあるとはいえないようです。

 独禁法の専門家は、公正且つ自由な競争を促進する上において、独禁法は一般法であり、知財法は、知的財産にかかわる特別法である、といいます。そこで、公正且つ自由な競争を促進する面から、独禁法と知財法とは、次のように図示されます(たとえば、平山健太郎著、独禁法から考える知的財産権、The Invention 2019 No.4参照)。

 ここで、一般法と特別法の意味を理解する際、商法第1条が参考になるようです。

 商法第1条は、商事に関し本法に規定なきものに付いは商慣習法を適用し商慣習法なきときは民法を適用す、と規定しています。

 特別法と一般法とは相対的なものであり、小生にとっては、上の図よりも下記の図の方が両法の関係を理解しやすいです。皆さんは、一般法、特別法の視点から、独禁法と知財法とをどのようにお考えですか?

 

 この図は、民法に見守られつつ、独禁法と知財法とが並列の関係に位置しています。

 矢印で示すXは、知財法の効力を超えて独禁法にはみ出すような行為です。独禁法と知財法の接点として、独禁法第21条があります。すなわち、独禁法第21条は、この法律の規定は、著作権法、特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認められる行為にはこれを適用しない、と規定しています。

 また、この独禁法第21条は、知財法の全てを明示はしていません。たとえば、種苗法や半導体集積回路の回路配置に関する法律、さらには不正競争防止法については規定されていません。規定されていないそれらについては、第21条の適用除外の規定は適用されないのか、あるいは、特許法などと同様に適用されるのか、疑問が出ます。その点、小生は、独禁法第21条は、注意的な規定であると理解し、当然に独禁法第21条は、すべての知財法に適用されると考えます。

 このほか、独禁法第21条を考えるとき、独禁法の考えに触れるような実施権について疑問が出ます。そのような知財法に基づく実施権も、知財法による権利であるため、それを隠れ蓑として独禁法の適用を逃れる行為が生まれるおそれがあるからです。さらには、独禁法には、たとえば、特許におけるクレームの作成について考えさせるなど、知財の実務力を向上させる上のヒントが含まれていると思います。なお、この小論は、先日の11月26日に開催した、第11回の企業関係者と弁理士の知財研究会(神奈川県立川崎図書館において)に際して考えた事項の一部です。

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