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「ファイル」発明の分割の経過を追う

 先に述べた特願2010-107221号(特開2011-104984号、特許第5633053号)の「ファイル」発明の分割の経過は、次のとおりです。

 図の中の左側の第1世代~第4世代の記載は、J-PlatPatの経過からの抜粋です。要するに、原出願からは、4つの分割出願の流れがあり、原出願のほか、3つの分割出願の計4件が特許化されています。

 それらの特許の技術内容について、右側の記載が概略的に示しています。その右側の記載は小生がメモしたものです。原出願から生まれた特許は、ポケットの複数を一単位として溶着することを前提とし、各溶着部を幅方向にずらすことにより、全体のポケット数を増すという技術です。「ずらす」ことにより、溶着可能なポケットの枚数に制約があることを打破しているようです。小生が理解するところ、原出願は、単位化したポケットを溶着することに絞った技術のようです。

 分割出願に目を向けると、第1世代の分割出願の内容は、内部にポケットを含むファイルではありますが、表紙体の折り方に関係します。その内容は、上の図で赤の楕円で示すように、青の楕円で示す原出願の内容とは明らかに異なります。それに対し、第2世代および第4世代の各分割出願の発明は、図に示すように、原出願の発明と一部重複するように見受けられます。そこで、その点について、以下検討したいと思います。

【原出願の発明と第2世代の発明】

 上のクレームは、第2世代についてのメインの請求項1です。黄色および黄緑で染めた部分の内容は、原出願の請求項1および2に対応します。原出願の発明と第2世代の発明との違いといえば、ポケットの溶着部についての特定の仕方です。原出願では、単に「基部側の内面」といって言っているのに対し、第2世代では、『背表紙近くの折り曲げ線とそれに隣り合う綴じ幅拡大用の折り曲げ線との間における基部内面側の平坦面』と言っています。この溶着部に関する記載の違いについて、明確な技術的意義を見出すことができないことから、小生には、実質的な違いとして理解することが困難です。皆さんは、いかがお考えでしょうか?

【原出願の発明と第4世代の発明】

 上のクレームは、第4世代についてのメインの請求項1です。黄色で染めたように、その中の技術的事項は実質的に原出願の請求項1と同様です。しかし、原出願の請求項1には、「ポケットの複数枚を一単位として」の特定事項がありますが、第4世代には、そのような限定がありません。この特定事項の有無によって、原出願、第4世代の各発明について違いが見出された結果、両者に特許が成立したと理解せざるを得ません。小生には、それらの両発明に違いを見出すことができません。なぜなら、原出願は、特定事項として明記しているとおり、単位化したポケットを溶着することに絞った技術以外を示していないと理解されるからです。その点、皆さんは、いかがお考えでしょうか?

 以上の検討を終えた段階で、発明の的確な把握あるいは理解の難しさ、そしてまた、的確な審査の難しさを再確認させられます。特許業界に生きる人間として、特許の難しさを和らげるという努力を、今まで以上に注意深く継続したいと考えています。

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