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特許法第2条第3項を考える

 特許法第2条第3項は、「実施」について定義します。用語の意味を定めることにより、解釈上の疑義を少なくすることをねらっているようです。この第3項の規定の一部を記します。省略した内容は、“~”で示します。

3 この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあっては、~
二 方法の発明にあっては、~
三 物を生産する方法の発明にあっては、~

 この規定から、特許法概説の著者吉藤先生は、発明を「物の発明」と「方法の発明」の二つの範疇(カテゴリー)に分類する、と理解しているようです。その理解と同様、実体審査の場においても、特許審査基準には、「請求項に係る発明の属するカテゴリーが不明確であるため、又はいずれのカテゴリーともいえないため、発明が不明確になる場合」が、特許法第36条第6項第2号の規定違反の一つとして明記されています。

 このような一般的な理解は、発明には、物の発明と方法の発明以外の発明は存在しないことを前提にしていると思います。しかし、長年にわたって発明を把握している小生は、クレームを作成するたびごとにその前提に疑問を抱かざるをえません。物や方法は、表現の問題であり、もともと抽象性をもつ発明を、そのような表現あるいは型にはめ込むとすれば、保護されるべき発明がいびつになったり、少なくとも一部がはみ出されたりすることになります。そのような事態を回避し、発明を有効に保護するためには、カテゴリーという型は邪魔になります。

 また一方、発明の定義の面からも、発明を二つのカテゴリーに絞る考え方には論理的に矛盾を感じざるをえません。自然法則を利用した技術的思想の創作である発明は、今までにない新しさをもちます。その新しさには、物あるいは方法のカテゴリーに属さないものもないとは言えません。特許法第1条がいう「発明の保護」は、発明の特性から、カテゴリーなどにより制約されたものではなく、柔軟性に富んだものであると理解されます。

 特許法第2条第3項は、「実施」を定義することにより、特許法第68条における「特許発明の実施」の内容を明確にすることをねらっているようです。しかし、「実施」の本来的な意味は、世の中のために、その発明を有効に活用することにあると思います。そして、“発明を有効に活用する”とは、物に適用して活用する場合、方法に適用して活用する場合、さらには、考え方として適用して活用する場合が想定されます。物と方法に絞る考え方では、最後の‘考え方として適用して活用する場合’が抜けてしまいます。発明を物と方法の二つのカテゴリーに絞る考え方は、「発明の保護」に制約を与えすぎ、一部の保護の実効を上げることができないと思います。

 ここで、クレームを作成するに対し、二つの考え方があることを紹介します。一つの考え方は、保護を受けるべき発明内容を「物」あるいは「方法」のカテゴリーに区分した後で、クレームに記載すべき事項を定めていく手法です。もう一つの考え方は、まずは、発明の要素である‘ネライ’と‘手段あるいは方法’を明らかにし、その後に、その考え方を「物」、「方法」、「その他」に適用する場合、どうなるかを定めていく手法です。

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