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結合商標の要部抽出のケース

 結合商標は、複数の構成要素が結合した商標です。構成要素としては、文字、図形、記号など、いくつかのものがあります(商標2条1項)。結合商標の要部抽出については、多くの場合、文字同士、文字と図形など、文字と図形を含む商標において問題になるようです。しかし、理論的には、結合商標の要部抽出については、すべての構成要素の結合/抽出(分離)が関係すると考えることができます。

 先のコラム(2020年6月20日)のほか、複数回にわたって、結合商標の要部抽出について考えています。実務家として知るべき、結合商標の類否判断に言及した最高裁判決は、一つに「つつみのおひなっこや事件」(最判平成20年9月8日(行ヒ)第223号)、また一つに「SEIKO EYE事件」(最判平成5年9月10日(行ツ)第103号)、さらに一つに「リラ宝塚事件」(最判昭和38年12月5日(昭和37年(オ)第953号))の各事件があります。前二者は、文字同士の結合であり、後の者は、文字と図形とがからむ結合が関係します。表現の形態からすれば、文字同士、特にそれぞれの文字の表示が同様である場合には結合性が高いのに対し、文字と図形のように表現の形態が異なる場合には、結合性が弱くなる(表現の面からは、分離されやすい)傾向があります。

 結合商標の分離性について、視覚性を基本にすれば、表現の形態の面から判断することになります。そして、各最判が言及しているように、分離すべき各要素が不可分に結合しているか否かについて、商標の機能を考慮した見方が大事になります。

 異議2019-900066号は、取引上の商標の機能というよりも、商標自体の外観的な形態の面から主に判断をしているようです。問題となる商標は、次に示すように、文字だけでなく図形(あるいは記号)がからんでいます。

 異議申立人は、「宝」、「Takara」、「タカラ」、「TAKARA」、「たから」の文字あるいは「宝」のデザイン化した文字、または「寶」の文字を構成に含む、例の会社です。異議理由には、4条1項11号のほか、4条1項15号を含みます。

 対象商標は、外観上、“寶龍創房”、“円輪郭の寶”、“HORYU SOBO”の3つの部分を含みます。大きな論点は、“円輪郭の寶”の部分を要部抽出することができるか否か、にあると思います。

 その点について、審判体は、『本件商標中、左側の下段に評された「HORYU」及び「SOBO」の欧文字は、同じく左側上段の「寶龍創房」の漢字の欧文字表記と認識されるものであるが、これらの欧文字及び漢字からなる文字部分と、本件商標中、右側に評された太字「寶」部分とは、書体も異なり、かつ、その構成に共通性もないものであることから、外観上分離して把握されるものであって、これを分離して観察することが、取引上、不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえず、他にはこれらの部分を常に一体にみなさなければならない特段の事情も見出せない。 してみれば、本件商標の構成中、太字「寶」部分は、独立して本件商標の要部として自他役務の識別機能を果たし得るものである。』

 審判体は、結果的に、太字「寶」部分を他の部分から分離することができるとし、「タカラ」の称呼及び「宝」の観念を共通にする点から、本件商標と引用商標は類似するとし、4条1項11号に該当する、との判断をしています。

 以上を振り返ると、審判体は、3つの部分を含む商標の外観的な構成を中心に判断していることが気になります。その点、審判体の判断は、4条1項11号の点からの判断が中心であり、4条1項15号の判断に触れていないことが目に留まります。判断の背景には、異議申立人の商標が、広く知られていること、あるいは著名性があることは確かだと思います。その周知あるいは著名ということが、太字「寶」部分の要部抽出を認めるという大きな要因になっているのでしょう。しかし、審判体の判断は、記載から見る限り、商標の各構成要素の表現形態を中心に論理展開されています。とすれば、表現形態の点から、要部抽出を避ける手が考えられます。私たち、実務家は、表現形態の面から権利化すべき商標をもう一度見直すことによって、要部抽出されにくい結合商標をつくることができる、と教えられます。

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