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「知的財産に関する専門家」の喜びを再び考える

 「知的財産に関する専門家」の喜びとは、一年ほど前のコラムのテーマです。趣味であれ、仕事であれ、やることに喜びを感じることは大事だと思います。その喜びにより、やることに対し、さらに深くはまっていくからです。同様に、やることに対し、どのような喜びを感じるかを考えることも有意義だ、と思います。より大きな喜びを見出すことにこそ、やる力を集中することができるからです。集中は、やることの中に、新しい発見を見出し、それにより、やることの面白さをさらに増すことにもなります。

 知的財産基本法(平成14年12月4日、法律122号)は、知的財産について、創造、保護、活用という異なる3面からの見方を示します。知的財産に関する仕事を、この3面から眺め、それぞれの喜びを考えることができます。

 知的財産は、広い概念ですが、その代表は発明です。ここでは、この発明を媒体として、「知的財産に関する専門家」、あるいは“知的財産を扱う人”の喜びを考えます。発明を生み出す人は発明者です。“生まれる発明、育てる弁理士”という標語があるように、かつては、知的財産の専門家の仕事は、発明が生まれた後から始まりました。しかし、今や、知的財産の専門家の仕事は、発明が生まれる前から始まる、と考えることが妥当です(弁理士法4条3項3号)。

 発明の誕生によって、特許を受ける権利が発生します。その特許を受ける権利を経済的な武器にするためには、特許出願が必要です。その特許出願は、特許庁の審査官の特許処分により、特許権へと転化します。そして、特許権は、経済的な武器として活用の段階に入ります。発明の誕生、特許出願、特許権という流れには時系列があります。その時系列に対し、創造、保護,活用の各区切りを入れようとするとき、戸惑いを覚えます。一般的には、創造は発明の誕生、保護は特許権の取得、活用は権利の活用をそれぞれ意味します。そしてまた、創造したものを保護し、保護したものを活用し、活用により新たな創造をうながす、と言われます。いわゆる創造-保護-活用の知財サイクルです。

 しかし、創造、保護、活用は、必ずしも一方向性をもって互いに関連するものではないし、それぞれを明確に区切ることもできないものである、と考えることもできます。たとえば、発明の誕生は発明者による創造ですが、その発明を客観的な特許を受ける権利と化すのは知財専門家による別の創造であり、後者の創造は、保護の概念と干渉し合います。また、保護の段階において、より妥当な権利を取得するため、特許を受けるべき発明の内容を補正することがあります。その補正に際しても、発明者、出願人、弁理士という立場により、適正な補正内容は異なります。そこには、創造、保護、あるいは活用の各概念が交叉し干渉し合います。

 創造、保護、活用は、時系列から見れば、発明の成長段階を区切る見方になります。また、創造、保護、活用は、発明を捉える立場から見れば、発明を多角的に見ることができます。創造、保護、活用という限られた土俵で思考するとき、あるときは創造という縛りにより、あるときは保護という縛りにより、さらに、あるときは活用という縛りにより制約を受けてしまいます。知財専門家の基本的な喜びは、そのような制約の下で適正な対応をすることにあるのかもしれません。しかし、他の人が気づかない気づきを見出すときには、制約を受けることはなく、個性に満ちた対応をすることができます。小生は、そのような個性的な対応にこそ、知財専門家としての大きな喜びを感じます。個性的な対応に加えて、経済的な武器としての強さを得るときの喜びは最高です。

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