ブログ

結合商標の要部抽出を考える

 結合商標は、複数の構成要素が結合した商標です。商標実務において、結合商標の構成部分の一部を抽出あるいは分離することが妥当か否か、すなわち、要部抽出の可否を判断することが求められます。この判断は、商標そのものの類否判断を左右することになるため、実務者の必須の課題の一つだと思います。

 この結合商標の類否判断に言及した最高裁判決として、一つに「つつみのおひなっこや事件」(最判平成20年9月8日(行ヒ)第223号)、また一つに「SEIKO EYE事件」(最判平成5年9月10日(行ツ)第103号)、さらに一つに「リラ宝塚事件」(最判昭和38年12月5日(昭和37年(オ)第953号))の各事件があります。

 そして、これらの三つの最判を根拠にして、結合商標の類否判断を語る知財高裁判決があります。それら知財高裁判決の中の二つを次に示します。

 第1は、「CORE ML事件」(令和2年5月20日判決言渡、令和元年(行ケ)第10151号審決取消請求事件)です。特許庁審判では、「CORE ML」から「CORE」を要部抽出し、引用商標“CORE”あるいは“コア”と類似すると判断したのに対し、高裁では、「CORE ML」から「CORE」を要部抽出することは妥当ではないと判断し、審決を取り消しています。

 この第1の高裁の判決の中に、結合商標の類否判断に関する次の語りがあります。

 第2は、「REEBOK ROYAL FLAG事件」(平成28年1月20日判決言渡、平成27年(行ケ)第10158号審決取消請求事件)です。特許庁審判では、「REEBOK ROYAL FLAG」から「ROYAL FLAG」を要部抽出し、冒頭のRとFとの文字高さが他よりも大となった、引用商標“ROYAL FLAG”と類似すると判断したのに対し、高裁では、「REEBOK ROYAL FLAG」から「ROYAL FLAG」を要部抽出することは妥当ではないと判断し、審決を取り消しています。

 この第2の高裁の判決の中に、結合商標の類否判断に関する次の語りがあります。

 上の第1および第2の高裁判決は、結合商標の類否判断について、3つの同じ最判を根拠にしています。しかし、第1の方では、要部抽出について「~の場合や、~場合などを除き、原則として許されない」としているのに対し、第2の方では、要部抽出について「原則として許されないが、~の場合や、~場合などには、商標の構成部分の一部だけを取り出して、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許される」としています。2つの高裁判決は、一方は否定的、他方は肯定的な表現をしています。この表現の違いによって、語ることに違いが生じているのか、あるいは違いが生じていないかを考えることも面白いと思います。

 その違いの点は別にして、ここでは、要部抽出ができるであろう(?)例外的な場合について考えます。その場合の一つは、“その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合”であり、また一つは、“それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合”であり、さらに一つは、“など”の表現に見出す、具体的に明示のない場合になります。

 “など”が生み出す具体的に明示のない場合、とはどのような場合を想定しているのでしょう。第1および第2の高裁判決が引用する3つの最判は、複数の文字の構成部分を含む結合商標だけでなく、文字の構成部分と図形の構成部分とを含む結合商標にも関係します。とすれば、高裁判決は、文字の構成要素だけでなく、図形の構成要素をも含む結合商標をも念頭にして議論を展開していると考えることができます。

 そのような理解と同様、“など”の表現を伴う最判「つつみのおひなっこや事件」は、もともとは文字だけを含む結合商標の争いですが、要部抽出の可否について、文字だけでなく、文字以外の他の要素、たとえば図形を含む結合商標をも前提とする類否の考え方に言及していると理解することができると思います。文字以外の図形や色彩を含む結合商標については、”など“が生み出す具体例が自ずと明らかになると思います。小生は、要部抽出の可否の基本は、不可分的な結合か否かを判断することにある、と考えます。

関連記事

  1. 結合商標の類否判断に関する二つの最判の関係
  2. 「白砂青松事件」を考える
  3. 事例を通して第3条第1項第3号の商標を再び考える
  4. 「音楽マンション」関連の商標から学ぶ
  5. 文字と図形との結合商標
  6. 第3条第1項第6号の商標
  7. 結合商標の類否判断
  8. 「白砂青松事件」を考える-付録
PAGE TOP