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CN、JP、USの審査官の数

 特許あるいは知財の世界を支える人的資源として、審査官は重要です。審査官は、特許出願を審査し、有用な特許の成立を図ります。したがって、特許は、発明の創作者である発明者と、発明者による発明を特許的に創作する弁理士と、弁理士による特許出願を審査する審査官との三者によって支えられている、ということができます。この特許の成立を促す特許制度を適切に運用するためには、これらの人的資源の数的なバランスが求められると思います。

 次の表は、WIPOのHPから得た、CN、JP、USの審査官の数の情報です。

 1996年の時点において、JPの審査官数は1,073であり、USの数2,434の半数よりも小さい値です。その後、現在に至るまでUSは審査官を増員し、近年では8,000前後の数になっています。それに対し、JPは、数こそ増えてはいますが、1,700前後という数値であり、その数値はUSの1/5強に相当します。ここ数年の特許出願の数は、大雑把にいうと、USが60万、JPが30万です(特許庁行政年次報告書2019年版)。なお、同じ報告書によると、2018年度のCNにおける特許出願の数は150万を超える莫大な数値になっています。このCNにおける数の増加は、2008年公布の「国家知的財産戦略綱要」に基づく施策に起因しているようです。

 ここで、CNは別にして、JPとUSとに絞って考えます。出願審査請求制度の有無の差はありますが、審査官一人当たりの審査すべき出願数の概略的な数を割り出すと、USが70~80になるのに対し、JPは170~180になります。すなわち、JPの審査官は、USの審査官の二倍以上の特許出願を審査しているような数値です。しかし、JP、USの各審査官は同様の能力をもち、同様の訓練を受けた同じ人間であるという点、しかもまた、特許情報のデータベースも共通化されている点などを考慮すると、上の数値の違いに合点がいきません。

 そこで、そのような数値の違いがなぜ生じるかについて考えました。小生は、審査のやり方の違いが、数値の違いとして表れているのではないかという考えをもちます。審査の中味を見ると、新規性や進歩性に影響する関連文献を見出すサーチ段階と、そのサーチ段階で見出した関連文献に基づいて、新規性や進歩性の有無を判断する実体的な審査段階とに分けることができます。JPでは、サーチ段階の業務の多くを外部の調査機関に委ねています。そして、JPの審査官は、外部の調査機関が見出した関連情報に基づいて、実体的な審査を行っていると理解することができます。この点、特許法第47条に基づいて審査官が行う「特許出願の審査」が、サーチ段階の業務と、実体的な審査段階の業務との両方を含むと考えるとき、現行の運用に疑問が生じます。その疑問は、私たち弁理士が明細書を作成するとき、弁理士ではない補助者の人に作成を委ねることに似ています。その場合、弁理士倫理は、補助者に対して適切な指導監督を行うことを求めます。JPにおける特許は、審査や明細書作成などの一つの業務を経時的に複数人で行う傾向があります。それが、上のような数値の違いを生じている主因と考えることができます。ただ、業務を適切に行うためには、業務に携わる人同士のスムーズなコミュニケーションが大事です。

 CNにおける出願数の莫大な増加は、一面うらやましいことではありますが、特許を愛する人にとっては、他方でわびしい思いを抱かせます。なぜなら、私たちはまずは人間であり、出願の増加に対し、知的な充実感が伴うことを求めるからです。しかし、USやCNの出願増は、審査官の増員と相関係していることは確かです。とすれば、JPで出願増を図るためには、JPOにおける審査官の増員も有効な一手であることを主張したいところです。

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