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事例を通して第3条第1項第3号の商標を再び考える

 商標法第3条第1項第3号の商標(つまり、産地、販売地等を普通に用いられる方法で表示する標章のみの商標)については、February 19, 2019のコラムでも考えました。そのコラムでは、特許庁の審査基準における「現実に用いられていることを要するものではない」という事項や、最高裁の昭和53年(行ツ)第129号の中の「特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であつて、多くの場合自他商品識別力を欠き」との言及との関係から考えました。

 この第3条第1項第3号に関連する事例として、商標「MARBLETONE」の登録性を問題とした不服2019‐11731に出会いました。この事例の出発は、標準文字による商標「MARBLETONE」を、第19類の「石こう製の天井板,石こう製の吸音天井板,…その他」に対する商標登録出願です。しかし、この商標登録出願は、商標が商標法第3条1項第3号に該当するという理由から拒絶査定になりました。拒絶査定の理由の中に、“表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべき”という言及があります。担当審査官は、上に述べた審査基準や最判の考え方に基づいて判断しているようです。

 そのような拒絶査定に対し、不服審判での審判請求人(出願人)の主張および手立ては、次のとおりです。

1 指定商品の減縮補正
 当初の「石こう製の天井板,石こう製の吸音天井板,…その他」を『石こう製の天井板,石こう製の吸音天井板』に減縮補正しました。「MARBLETONE」と同じ称呼を生じる“マーブルトーン”という商標を天井用の化粧ボードに使用している事実があることからの補正のようです。“マーブルトーン”の商標には、使用に基づく信用がすでに生まれていることを根拠にし、その信用が化体した商標の保護を訴えるという考えのようです。

 2 審判請求人の主張
 審判請求人は、上のような商標に対し、登録を認めないとするためには、「MARBLETONE」が‘石こう製の天井板類’に普通に用いられている事実があることについての証拠の提示、あるいは、使用を欲する蓋然性があることについての客観的な証拠が必要である、と主張します。

 そのような審判請求人の主張、手立てに応じて、審判体は、「本願の指定商品との関係において、商品の品質を直接的に表示したものと認識するとまでは言い難い。」、そして、「当審において、職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「MARBLETONE」の文字が、商品の具体的な品質等を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情を発見できなかった。」という常套句をもって、「本願商標は、登録すべきものとする。」との審決を出しています。

 以上の経過の中に、小生は、論理的に少しあやふやに感じる点を見出します。一つに、本願商標が「MARBLETONE」であるのに対し、審判請求人が根拠とする事実は、同じ称呼を生じる“マーブルトーン”という商標に関するものです。主張の根拠とする商標“マーブルトーン”と、本願商標「MARBLETONE」とは互いに異なります。その点、第3条第2項の使用による特別顕著性の観点から述べる、審判請求人の主張は、論理的に弱いと思われます。また一つに、「職権をもって調査するも、・・・、取引上一般に使用されている事実は発見できず・・・商品の品質等を表示したものと認識するというべき事情を発見できなかった。」とありますが、たとえば、特許関連公報の中には、‘大理石調’とか‘マーブルトーン’という用語が、天井を含む化粧ボードに関連して技術の説明のために一般に使用されている事実があります。そのような事実は、商標との関係でどのような位置を占めるのでしょう。また、「職権の調査」とは、どのような範囲なのか、知りたいところです。

 第3条第1項第3号の商標に該当するか否かの綱引きは、商標選択の自由度や既存の信用と、公益性や自他識別力からの独占適応性との戦いですが、今の戦況は、前者に有利な感がします。

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