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クレームの中の句点

 クレームとは、特許を受けようとする発明を特定する請求項です。現時点において、そのクレームには、発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければなりません(特許法36条5項)。その点は、実用新案でも同様です(実用新案法5条5項)。実用新案は、特許とは異なり無審査登録であり、実用新案登録出願があったときは、放棄、取下げ、却下の場合を除いて、実用新案権の設定の登録がなされます(実用新案法14条2項)。

 無審査登録ということから、実用新案では、特許におけると同様な方式的な要件に加えて、いわゆる基礎的要件に適合することが求められます(実用新案法6条の2)。この基礎的要件の一つとして、実用新案登録請求の範囲の記載が著しく不明確か否か(実用新案法6条の2第4号)があります。万が一、この基礎的要件をクリアしないときには、特許庁長官からの補正命令を受けます。となると、補正命令に対応する期間だけ、設定の登録が遅れてしまいます。

 上の4号の具体例として、クレームの中に複数の句点(つまり、「。」)を含む場合があります。4号に関する判断については、週に一度に赴く審査官が担当しているようです。クレーム中に複数の句点があるからといって、必ずしも“記載が著しく不明確”になるとは限りません。しかし、準方式的な判断(審査)ということから、形式的な判断をしているようであり、残念ながら明らかに不適切な判断が生じていると思います。なぜ、そのような不適切な判断、つまりはその判断に基づく補正命令(手続補正指令書)が出ているかに興味を覚えました。

 調べたところ、審査基準の実用新案登録の基礎的要件の項の中に、次の記載を見出しました。特に関連する部分にアンダーラインを引きます。

 2.5.1 実用新案登録請求の範囲について
 (1)実用新案登録請求の範囲に必要な事項が記載されていない場合に該当する例
   ・・・・・・ 
   ・・・・・・
 (2)実用新案登録請求の範囲の記載が著しく不明確である場合に該当する例
   (i)請求項の記載内容が技術的に理解できないものである場合
   (ii)請求項の記載が考案の詳細な説明又は図面の記載で代用されている結果、請求項の記載内容が不明確となる場合
   (iii)一の請求項において、句点で区切られる文章が複数記載され、それぞれの文章に異なる考案が記載されている場合

 4号に関する判断をする担当者は、上の(iii)に該当するかについて、本来的には、・クレームの中に複数の句点「。」があること、および・クレームに複数の考案が記載されていること、の二つを検討すべきです。しかし、それらの二つの中で、前者の複数の句点「。」の有無は、形式的に判断することができるのに対し、後者の複数の考案が記載されているか否かは、内容的な検討を伴うことから、たやすいことではありません。基礎的要件の判断は、法的には準方式的な審査ですので、内容的な検討まですることなく、結果的に不適切な判断を生んでいるのではないか、と推測することができます。

 (iii)における「それぞれの文章に異なる考案が記載されている」かについては、複数の句点「。」を含むクレームの記載の全体を見ない限り、一の考案か、複数の考案かを判断することはできないと思います。クレームの中に複数の句点「。」があることだけを見て、複数の考案が記載されているとみなし、結果的に“記載が著しく不明確”という不適切な判断が生まれている、と理解することができます。

 クレームの中に複数の句点という問題に関して、ネット情報には、クレームは一文で記載するという議論、クレームは体言止めで記載するという議論など、いろいろな考え方を見出します。先のコラム「発明とは何だろう-その1」の中で触れた法学者の清瀬一郎博士の言、『発明者ハ「自然力利用ノ思想」ヲ発明スルモノナリ、「物」(ヤ「方法」)ヲ発明スルニアラス』をここで再び紹介します。“思想”である発明(考案)は、形式的な見方だけで正しい判断をすることは困難です。正しい判断をするためには、少なくとも実体である思想に触れる見方が求められるのではないでしょうか。

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