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日本語明細書を改善するためのヒント

1 日本語明細書の数的な現況
 特許行政年次報告書(いわゆる特許庁年報)の2019年版によると、日本の国内における特許出願件数は、10年ほど前から漸減傾向です。2009年の件数が34.8万件であるのに対し、2018年のそれは31.3万件です。これに対し、日本から海外への特許出願件数は、2008年が17.9万件、2017年が20.0万件と、漸増傾向にあります。ここで、日本国内の出願の内訳を見ると、外国人による出願が2割、内国人による出願が8割ほどになります。
 特許実務の一般的な流れとして、海外への特許出願は、パリルートやPCTルートが多いと思います。それらルートでは、通常、日本語による明細書を翻訳することにより外国明細書(多くは、英文明細書)を作成します。これらの事情を考慮するとき、国内出願件数が減少している現時点においても、私たち特許実務家は、一年あたり少なくとも20数万件を超える数の日本語明細書を作成していることになります。

2 日本語明細書の役割
 このような日本語明細書は、特許制度を支える大切な柱の一つです。なぜなら、明細書は、新しい技術を公開する主役であり、特許の保護範囲を定めるクレームの一番の脇役だからです。
 特許制度というドラマの成否は、まずは、主役クラスの日本語明細書の良否がかかっている、といっても過言ではありません。ですから、特許制度を人的に支える特許実務家は、日本語明細書を常に改善し良くする努力をするべきです。世の人に魅力を感じさせない明細書は、世の人に対し、特許制度自体の魅力を感じさせず、出願などへの意欲を盛り上げることもできないことでしょう。

3 日本語明細書の改善
 「改善」とは、悪いところを直して良くすることです。長年の実務経験が、日本語明細書の悪いところを教えます。悪いところは、大別して二つあります。第1の悪いところは、読む人が理解しにくいことです。第2の悪いところは、保護を受けるべき発明について、特許的に十分に分析されていないことです。
 理解しにくいという第1の問題は、明細書作成者が明細書の読み手を考慮していないことから生じていると思います。明細書の読み手は広汎です。明細書の表現対象である発明を理解するための技術理解力を十分には備えていない人もいるし、保護を求めるべき特許発明の技術的範囲を定めるための用語解釈になじまない人もいます。たとえば、発明者は、自分の発明を技術的には理解する半面、慣れ親しまない用語、特には、技術的思想を表現するための用語に違和感を覚えます。また、発明者でない特許関係者は、発明者とは異なり、用語に違和感を覚えることが少ない半面、技術的思想である発明を正しくは理解できないことがあります。
 広汎な読み手を考慮した対応が、第1の問題を解決するために必須です。そのための策として、技術的に分かりやすい文章表現と、論理的に明確な文章構成との両方が大事だと思います。
 もう一つの特許的な分析の不足という第2の問題は、明細書作成者の発明の把握力不足から生じていると思います。要は、発明の把握力についての鍛錬不足です。そして、この鍛錬の実効を上げるために、まずは、「発明」とは何か?と自問自答することです。把握すべき「発明」について知ることは、それを把握する力を高める上でプラスになることは確かです。加えて、発明の把握力を誰よりも高めるためには、他の誰にも負けないような把握力の鍛錬が求められる、と考えます。

 以上、特許出願が増え、特許制度がより活発になることを祈りつつ、少し抽象的で生意気な議論を展開しました。明日を目指す特許実務家の応援歌になれば幸いです。

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