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特許の文章に思うこと

 特許制度は、新しい技術を公開した者に対し、独占的な保護を与える制度といわれます。文章は、この制度を動かす基本的な媒体です。たとえば、新しい技術を公開する手段として明細書があり(特許法第36条)、また、独占的な保護の範囲を定めるものは、特許請求の範囲です(特許法第70条)。文章が、これらの明細書および特許請求の範囲を構成します。さらに、審査官とのコミュニケーション手段としての意見書があります。文章は、この意見書をも構成します。

 このように、文章は制度を動かす基本的な媒体であることから、特許制度に密に関与する私たち特許事務家は、媒体としての文章のあり方について必然的に考えることでしょう。小生も、この文章のあり方については、特許業界に入った当初から何度も考え続けています。過去に記した小論の中から、数点だけ抜粋的に紹介します。

(「特許再考-特許の原点を考える-」、1993年、翠書房発行の中から)
 『たとえば、明細書は読まれるものであり、読み手としては、発明者、特許担当者、審査官、審判官、裁判官等々、技術的にも法律的にも素人から玄人にまで及ぶ。そうした広汎な読み手を考えるならば、分かりにくい言葉あるいは表現を使うべきではなく、また、できるだけかみくだいて説明すべきであることが納得できる。
 こうした意味を特許法の規定だけからつかみ取ることはなかなかできないことであろう。良い明細書を求める者は、法の規定以外のところにも考える場をもつべきである。』

(「明細書について先輩から後輩へのアドバイス-仮想発明“コロンブスの卵”を題材として-」、パテント2007 Vol.60 No.10の中から)
 『記載すべき内容に創造的な活動をし、その活動の結果物の表現は素直でわかりやすい文章にしたい。そのような文章はシンプルであり、誰もが正しく理解することができるものであろう。特許における本当のプロは、文章表現を誰よりも鍛錬し、文章表現に悩むことがないような表現力をもつべきである。別にいうと、文章表現を鍛錬し続けることは、特許のプロの条件の一つである。
 文章表現の力は、どの分野でも共通し、特許だからといって特殊な面があるとは思わない。だから、文章表現についての数多くの本(内外のもの)の中から、自分の考え方に合ったものを選び参考にし、自己鍛錬すれば良い。』

 以上の数点の抜粋のように、小生は、特許の文章もほかのテクニカルライティングと同様、シンプルで分かりやすく、明確であることを目指しています。別にいうと、いわゆる3C(つまり、Clear Correct Concise)を基本にしています。より分かりやすく、より説得力がある文章を追求し続けることにより、表現すべき対象が何かを常に意識しながら、文章展開をする手法を見出しました。特許の場合、発明の二要素、つまり、ネライと解決の考え方(メカニズム)をバックグランドにして文章を創り上げていくことが大事だ、と確信しています。

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