知財実務研究

「音楽マンション」関連の商標から学ぶ

 商標実務を行う上で、「音楽マンション」関連の商標(商標実務家にはよく知られた商標ではないでしょうか)は、いくつかの考える材料を提供しています。ここで、この商標は、その中に“マンション”という用語があるように、区分は第36類および/または第37類の役務に関係します。

 まず、関連の商標を示します。第1は、出願人Rによる「音楽マンション」という商標登録出願T1(2002‐073996)があります。このT1は、商標法第3条1項のいわゆる特別顕著性の点から拒絶査定となり(平成15年6月24日)、Rが審判請求をしなかったことから拒絶査定が確定しました。

 第2は、Rとは別の出願人Kによる「音楽マンション」という商標登録出願T2(2013‐34466)があります。このT2は、T1の後の別の出願人による出願であり、登録番号第5675530号として権利化されています(登録日:平成26年6月6日)。

 同じ商標「音楽マンション」が、T1について権利化されず、別のT2に対して権利化が認められている点に、考える材料を見出します。この判断の違いについて、判断主体によって判断結果を異にする、という一般的な理解をすることもできます。その観点から、さらに深く考え、いずれが妥当か否かなどについて考えることもできます。しかし、ここでは、後に成立した商標登録についての、無効審判事件(無効2015-890094号)、およびその審決の取消しを求めた審決取消請求事件(平成28年(行ケ)第10191号)の中に、前記した考える点に対する一つの答えを見出すことができます。すなわち、(裁判所の言ですが)「上記拒絶査定は、どのような資料に基づいて判断されたかは必ずしも明確でないものの、商標法第3条第1項6号該当性についての判断に誤りがあるものといわざるを得ないから、これに対する不服審判請求に係る審決等において取り消されるべきものと解される。それにもかかわらず、原告は、不服審判請求をするなどして正しい判断を求めなかったのであるから、原告の主張(「音楽マンション」につき、特許庁は過去において拒絶査定をしたにもかかわらず、本件商標を登録査定したのは、平等原則、禁反言の原則、信義則にそれぞれ違反するなどとの主張)は、失当であるというほかない。」との部分です。

 「音楽マンション」について拒絶査定を受けたRがとるべき手として、さらなる不服申立ては、あくまで一手にすぎません。そのほか、Rには、いくつかの他の手立てがあります。たとえば、音楽マンションを含む結合商標の形態での権利取得、「音楽マンション」類似の他人の商標権の成立を想定した防護策などです。実務家として、不服申し立てをすることを提示するだけでなく、他の有効な手立てを提示することも大切です。提示の幅は、実務家の幅につながります。

 無効審判およびその取消訴訟で敗訴したRは、その後に「ミュージション/みゅーじしょん」(登録第5884964号)(「ミュージック」と「マンション」を合わせたもの)を権利取得しています。また、(Rとは別の出願人ですが)「ミュージックマンション」(商願2018-154819号)や「音楽賃貸マンション」(商願2018-154820号)の出願を見出します。しかし、それら二つの出願は、商標法第3条第1項第3号の特別顕著性、ならびに、「音楽マンション」の既登録商標の存在による商標法第4条第1項第11号の各規定によって、拒絶査定になっているようです。

 この拒絶査定に対し、一つ気になることがあります。先の「音楽マンション」における無効理由が、商標法第3条第1項第6号であるのに対し、「ミュージックマンション」および「音楽賃貸マンション」における拒絶理由が、商標法第3条第1項第3号である点です。6号は、1号から5号の総括規定と通常はいわれています(青本参照)。6号が、1号から5号との関係で、総括規定なのか、補充的な規定なのかについて、はるか昔の受験時代に考えました。また、2項の「3号から5号まで」という限定理由についても疑問がありました。

 今考えますと、「音楽マンション」、「ミュージックマンション」、「音楽賃貸マンション」などについて、審査官が採用する第3条第1項第3号の適用の方が妥当と思えます。なぜなら、総括であれ、補充であれ、1号から5号を、そこに規定したグループのものを示す、と解するのが良い、と考えるからです。とすれば、「音楽マンション」などの3つの商標は、形式的に6号を適用するのではなく、3号に分類わけする方が妥当である、と小生は考えます。

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