知財実務研究

補正に思うこと

 補正、つまり、不十分な箇所を補い正すことは、知財の手続きにおいてごく普通です。この補正について、いわゆる青本は、「手続の円滑迅速な進行を図るためには、初めから完全な内容の書類を提出することが最も望ましいが、実際問題として当初から完全なものを望みえない場合も少なくないので、一定の制限の下、手続の補正を認めることとしている。」といっています。

 この補正に関して、特許法は、第17条に基本規定を設けています。知財の実務家のだれもが知る内容、「手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。」というものです。その点は、実用新案法も同様であり、第2条の2が「実用新案登録出願、請求その他実用新案登録に関する手続をした者は、事件が特許庁に係属している場合に限り、その補正をすることができる。」と、規定しています。

 特許法第17条、実用新案法第2条の2は、法令の本則の中の総則に位置しています。それに対し、意匠法における補正の規定は第60条の24、商標法における補正の規定は第68条の40であり、両者ともに本則の中の雑則に位置しています。小生は、特許法、実用新案法と、意匠法、商標法との補正規定の配置あるいは位置づけの違いに興味を覚えました。すなわち、そのような位置づけの違いが生じる理由を知りたいと考えたわけです。

 まずは、法令の構成について調べたところ、総則は、本則の全体に通じる共通の規則であり、普遍的な内容を含むと理解することができる、と思います。その点、本則とともに法令を構成する付則は、主要事項に付随する必要事項を定めた部分です。法令の本体となる部分は本則であり、それには、総則的規定のほか、本体的規定および雑則的規定が含まれるようです。本体的規定は、本則の中心となる部分であり、章や節に分類されています。それに対し、雑則的規定は、章や節に分類できないような雑多な個別的な事項をまとめた部分です。

 このような法令の構成の面から見ると、補正の位置づけは、意匠法、商標法の場合よりも、特許法、実用新案法のそれの方が高い位置にある、と理解することができます。補正の内容については、経験的に、方式的あるいは形式的な不備を正すものと、保護を求める対象の実体を変化させるものとがあります。前者の不備は、4法の間に大きな違いはなく、後者の実体の変化についてこそ、4法の間の違いは大きいと思います。

 特許法、実用新案法の保護対象は技術的考え方であるため、保護を求める内容について、的確に表現することは、意匠法、商標法のそれに比べて困難であります。しかし、保護を求める内容の技術的特徴を的確に把握することができれば、的確な表現を自ずと得ることができると思います。頭書に述べた補正の趣旨の一説を今一度書き記します。『初めから完全な内容の書類を提出することが最も望ましい。』的確な保護対象の把握と、的確な情報の検索と、的確な技術的特徴の設定とによって、完全な内容のクレームはむずかしいかも知りませんが、完全に近い明細書の作成は可能である、と確信します(これに関して、小生の小論「完全明細書についての考察」、パテント1997 Vol.50 No.11をご参照いただければ幸いです。)

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