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第3条第1項第6号の商標

 「カラダを守る乳酸菌」という標準文字による表記について、たとえば、乳酸菌を含有する乳清飲料などを含む指定商品の下に、商標登録が認められました(不服2019‐1612)。この種の記述的商標について、しばしば相談を受けることがあります。相談の中味といえば、第1には登録性、また、第2には、登録することの意義などです。第1の登録性は、商標法第3条第1項第6号をクリアするかという疑問そのものです。また、第2の登録の意義は、それ自体(それだけ)を商標として使用することは少ないが、主たる商標に付随的に使用することからの疑問、別にいうと、そのような使い方をするとしても登録を得ることが必要かという疑問です。

 そのような背景から、「カラダを守る乳酸菌」の登録までの経過を探ることにしました。原査定では、案の定、“本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、上記に照応する商品以外の商品に使用するときには、・・・同法第4条第1項第16号に該当する。”との判断です。この理由は、指定商品について、「乳酸菌を含有する~」という補正をしたとしても、第3条第1項第6号をクリアすることはない、という意味を含みます。つまり、「カラダを守る乳酸菌」は、『(第1号~第5号に該当する商標ではないが)需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標』に該当する、と理解することができます。

 第3条第1項第6号の商標について登録が得られない理由は、該当する商標が出所表示という商標の本質的機能を果しえないことにある、と考えられます。ここで、第6号の位置づけについて、どのように考えることが妥当でしょう。いわゆる青本は、第6号は第1号から第5号までの総括条項、あるいは、第1号から第5号は第6号を導き出すための例示的列挙といっています。そしてまた、法規定上、商標法第3条第2項により、使用により特別顕著性の発生が認められていますが、それは、第3号から第5号に該当する商標だけに対してです。「第3号から第5号」という限定をした理由について、疑問に思われたことはありませんか? (第3号から第5号に入らない)第1号、第2号、第6号に該当するものの中には、標準文字による表記のものだけでなく、特殊な表記なものも考えられます。その特殊な表記は、当初は商標の本質的機能を生じるとはいえないものであっても、特殊の表記であるがゆえに、その後の使用により、その本質的機能あるいは特別顕著性を発生するに至るものもあると思います。したがって、「第3号から第5号」は、『第1号から第6号』とすべきである、という考え方も出てきます。

 さて、原査定では、基本的に、第3条第1項第6号をクリアしないとの判断です。それに対し、審判において、請求人は、複数ある指定商品中、いくつかに対し「乳酸菌を含有する」の修飾語を加えることにより、第4条第1項第16号に該当しないようにしました。その下で、審判体は、“当審において職権をもって調査するも、本願の補正後の指定商品を取り扱う業界において、「カラダを守る乳酸菌」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、さらに、取引者、需要者が該文字を自他商品の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できなかった。”とし、結果的に、原査定は取消しを免れない、との判断です。どうやら、審判体は、もともと、「カラダを守る乳酸菌」は、第3条第1項第6号をクリアすると考えていたようです。

 以上の経過を参照しても、頭書に述べた第2の疑問は解消しません。そこで、ネット情報で「乳酸菌/体(カラダ)を守る」を調べたところ、次のような情報を見出しました。
・「からだを元気にする乳酸菌」、「からだを守る役割をになう、「免疫細胞」へ働き」
・「乳酸菌が体にいい理由」、「乳酸菌は体を守る免疫細胞を元気にする」
・「“守る力”にすぐれた“プロテクト乳酸菌”」、「健康維持を支える乳酸菌」
・「守る働く乳酸菌」、「カラダの中から強くなりたいあなたの体調維持」
・「おいしくカラダを守る乳酸菌入り」

 これらの情報は、乳酸菌飲料を宣伝するための付加的な表現であり、それらの表現は商標の主たる部分として使用されてはいません。これらによっても、第2の疑問がすべて解消することはなく、逆に、第1の疑問に対する答えをさらに追及することになりました。

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