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「地下構造物用丸型蓋」発明の把握、特には、本質的部分の把握(2)

 まずは、特許第5886037号公報の記載から、「地下構造物用丸型蓋」の発明を理解しよう。請求項1の記載は、次のとおりです。なお、特徴部分を理解し易くするため、色付けをしています。

 この請求項1を読む限り、この特許発明の丸型蓋は、a.(蓋あるいは蓋本体を受ける)受枠側に、受枠凸曲面部(21)と受枠凹曲面部(22)とを連続して形成し、b.蓋本体の側に、蓋凹曲面部(11)と蓋凸曲面部(12)とを連続して形成し、さらに、c.受枠には、受枠凹曲面部(22)の上方に受枠上傾斜面部(23)が連続し、蓋本体には、蓋凸曲面部(12)の上方に蓋上傾斜面部(13)が連続し、さらにまた、d.閉蓋状態で受枠上傾斜面部(23)と蓋上傾斜面部(13)とははまり合うが、その下方の部分はクリアランスをもつ、という形態的な特徴を備えることが分かります。

 しかし、請求項の記載から丸型蓋の形態的な特徴は分かりますが、そこに潜む考え方を理解することができません。それは、この請求項1には、技術的思想を明らかにする上で必要な「ネライ」や「技術的意義」が記載されていないからです。小生は、保護を求める範囲を定める請求の範囲には、「ネライ」や「技術的意義」を記載することが必要である、と考えています。この丸型蓋の発明についても、発明の中味を正しく理解するために、(他の場合と同様)請求項に加えて、明細書や図面の記載に助けを求めることになります。

 そこで、特許第5886037号公報の記載から、参考となる図面と関連する説明とを抜き出して考えます。

【公報の図2からの引用】

【公報の図3からの引用】

 図2からの引用の最初の図は、蓋本体(10)が受枠(20)に載り、受枠上傾斜面部(23)と蓋上傾斜面部(13)とがはまり合った状態であり、閉蓋状態を示しています。それに対し、後の方の図3からの引用の図は、閉蓋操作の途中の段階であり、蓋上傾斜面部(13)は蓋上傾斜面部(13)にはまり合う前の状態を示しています。

 この発明の課題(あるいは「ネライ」)は、“閉蓋の際、バールで蓋本体を引きずるようにしたり、蓋本体を後方から受枠内に押し込むだけで蓋本体をスムーズに受枠内に収めることができる”ようにすることにあります(段落番号0007)。また、この課題を引き出す前の説明として、“蓋本体を閉蓋する際、・・・蓋本体の前部が大きく受枠内に落ち込むことがあり、この状態で蓋本体をさらに押し込むと蓋本体の前部左右の側面が受枠の内周面(垂直壁)に接触して嵌り込んでしまい、それ以上蓋本体を押し込むことができなくなる。”との説明があります(段落番号0006)。

 上の公報の図3からの引用の図(a)が示すように、“蓋本体を閉蓋する際、・・・蓋本体の前部が大きく受枠内に落ち込むことがあり、”という点では、今までのものでも今回の発明のものでも同様である、と理解されます。そのような落ち込みの可能性はあるが、この発明では、“蓋本体をさらに押し込むことにより、最終の正しい閉蓋状態を得ることができるようにすることを「ネライ」にしている、と理解することが妥当です。

 次の平面図により、閉蓋操作を段階的に示すことができます。青色が蓋本体(10)側であり、赤色側が受枠(20)側を示します。

第1段階(受枠の一部に重なるように蓋本体を配置する)

第2段階(蓋本体の後部を押し、受枠と蓋本体との重なりを大きくする)

第3段階(蓋本体を受枠の内部に完全にはまり込ませる)

 この発明の課題がいう“蓋本体を後方から受枠内に押し込むだけで蓋本体をスムーズに受枠内に収めることができる”とは、第1段階から第2段階、そして、第2段階から第3段階へと至るすべての動きをスムーズにすることを意味すると理解することが妥当です。

 以上、この発明の課題あるいは「ネライ」を検討しました。次回には、その「ネライ」に基づく、この発明の手段について検討したいと思います。

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