知財実務研究

「ネオ」と一般的な商品名を含む商標

 商標の構成要素あるいは構成部分として、「ネオ」(あるいは「NEO」)を含む商標は意外と多いです。しかし、「ネオ」は新あるいは新しい、という意味をもつ用語として、良く知られています。その意味から、「ネオ」は、商標法3条1項3号に該当する典型的な用語の一つであり、だからこそ、その「ネオ」という用語と、一般的な商品名とを含む結合商標は登録要件を欠くであろう、と理解していました。

 そんな中、「ネオバターロール」の文字を標準文字で表記した商標であり、「バターロールパン」を指定商品として含む権利に出会いました。その出会いにより、この商標の登録がなぜ許されたのか、について考える機会を得ました。「ネオバターロール」は、「ネオ」という用語と、「バターロール」という一般的な商品名との結合であるため、通常は、登録要件を欠くのではないか、という疑問が生まれるからです。

 案の定、「ネオバターロール」商標は、審査段階の原審では拒絶されていました。商標の構成中の「ネオ」の文字は、「新」の意味をもち、品質を誇称する「NEO」に通じ「新しい」または「新製品」の意味を容易に認識させることから、その商標は、全体として「新しいバターロールパン」の意味を理解させるにとどまり、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきである、との理由からです。

 その原査定は、不服審判(2018-17423)によって取り消されました。その取消し判断は、『当審において職権をもって調査するも、本願の指定商品を取り扱う業界において、「ネオバターロール」の文字が、原審説示のように、商品の品質を表示するものとして一般に使用されている事実は発見できず、さらに、本願商標に接する取引者、需要者が、当該文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。』との理由に基づいています。

 ところで、この「ネオバターロール」という登録商標に先立ち、次の商標が商標登録5900877号として権利化されています(商標登録公報からの引用)。

 この既登録の商標は、大きな太字で表記された「ネオ」と、小さな太字の「バターロール」との二段表記の形態です。この二段表記の『ネオ/バターロール』の禁止的効力が、上に述べた標準表記の「ネオバターロール」に及ぶか否か、が疑問になります。換言すると、二段表記の『ネオ/バターロール』の権利を得たのちに、標準表記の「ネオバターロール」の権利を取得する上で、どのような意味を見出すことができるか、という疑問があります。この点、“アップルパイ”を指定商品に含む「スノーホワイトアップルパイ」と、“菓子,パン”を指定商品に含む「スノーホワイト」との異なる権利者による併存(商標権の禁止権のコラム参照)、あるいは、同じ飲食物の提供において、「海賊」と「海賊スパゲッティー」とが異なる権利者による併存(商標「〇〇」と商標「〇〇+役務名」との併存に思うのコラム参照)する現況において、疑問は深まります。さらには、上に述べた「ネオバターロール」、「ネオ/バターロール」の各商標と、たとえば、『ネオドーナツ』などの他のネオパンとの類否判断についても疑問があります。

 以上、商標の“難しさ”(小生にとっての難しさ)の一例を紹介しました。

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