知財実務研究

文字と図形との結合商標

 結合商標とは、商標の構成要素の組合せからなる商標です。それらの結合商標のうち、文字同士の組合せの結合商標について、8月31日のコラムにおいて話題にしました。話題の中心は、類否判断に際し、組み合わせた文字と文字とを分離することが許されるか否かの考え方です。文字同士の組合せの場合、各文字の大きさおよび書体が同一であって、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるとき、高い結合性をもつことから、分離抽出が難しいとのことでした。

 そのような文字同士だけではなく、そこに図形がさらに組み合わさった場合には、別の観点から一部の構成部分の分離抽出が難しいという判断が生まれるようです。不服2018-4822号が、その一例です。問題となった本願商標は、次のように、黒色の矩形の内部に、「R」の文字と「+」の記号とを白抜きで表し、その下に、「RUGBY PLUS」の文字を、上段部分に比べ小さく横書きしたものです。

この本願商標が、次に示す引用商標と類似するか否か、つまり、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するか否かが問題です。

 原査定では、本願商標の構成中「欧文字の『R』と記号の『+』を組み合わせて図案化した」部分を分離抽出し、それが引用商標と類似するとし、拒絶の結論を出しました。しかし、審判体は、その分離抽出は妥当ではないとし、原査定を取り消したのです。

 審判体の判断の根拠は、本願商標の「その文字構成及び配置に照らせば、上段の「R」の文字は下段の「RUGBY」の頭文字を表したものとして、また、本願商標のかかる構成においては、殊更「R+」の部分のみが着目されるというよりは、構成全体をもって一体不可分のものとして把握、認識されるとみるのが相当である。」ということです。

 この審判体の根拠を正確に理解することに少し戸惑います。なぜなら、審判体は、上段と下段との二段書きの構成、そして、上段の「R」の文字は下段の「RUGBY」の頭文字を表したものとの捉え方に基づいて、構成全体をもって一体不可分とするのが妥当である、と判断しているように理解されるからです。上段の文字と下段の文字との大きさがかなり異なるため、大きな上段の文字部分を要部の一つに見ることができるとする判断が生まれる点から、「つつみのおひなっこや事件」の最高裁判決との関係から、判断には少し疑問が生じます。

 審判体の根拠の中に、本願商標の中の「黒色の矩形」の図形が明示されていないことに疑問を感じます。その「黒色の矩形」の図があるからこそ、分離抽出は妥当ではない、つまり、構成全体を一体不可分とする判断が生まれる、と判断する方がベターであると考えます。

 文字と図形との組合せからなる結合商標については、文字部分と図形部分とが外観的に明確に区別されることから、一般には、文字部分と図形部分とが互いに分離抽出されやすいと思います。その点、別の不服2018-11258号の商標、一部が欠けた長方形の図形部分と、その下部に配した文字部分とからなるものについて、下部の文字部分が分離抽出され、称呼同一の引用商標と類似すると判断された例などが参考になります。

 前に述べた不服2018-4822号における「黒色の矩形」の図形の役割を参考にし、後に述べた不服2018-11258号における商標を変形し、権利化する方法が考えられます。たとえば、一部が欠けた長方形の図形部分の中に、図形とマッチングするように、下部にあった文字部分を配置する手があります。商標実務を行うとき、新たに採用しようとする商標であるなら、クライアントは、このような商標変形のアドバイスを歓迎するのではないでしょうか。

 

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