知財実務研究

商標「〇〇」と商標「〇〇+役務名」との併存に思う

 商標実務の中で、次のような事態に遭遇し、いくつかの疑問を抱きつつ今後の実務的な対応を検討しています。

 第43類の飲食物の提供を指定した先願登録商標「海賊」(出願日:平成26年9月1日、登録番号:5732567T)と、同じ第43類の飲食物の提供を指定した後願登録商標「海賊スパゲッティー」(出願日:平成28年11月25日、登録番号:5970535T)とが共に権利化され併存しています。

 第1の疑問は、同じ飲食物の提供において、「海賊」と「海賊スパゲッティー」とが何ゆえに非類似であるのか?  というのは、「スパゲッティー」は一般的な飲食物の名称の一つであり、「海賊スパゲッティー」中の「スパゲッティー」は識別力をもたない、と考えるからです。そしてまた、「海賊」と称する店舗のメニューには、「海賊~」という飲食物、たとえば海賊スパゲッティーをはじめ、海賊スパゲッティーほかの海賊風の食べ物が記されているのではないか、と考えるからです。

 したがって、第2の疑問として、「海賊」の商標権をもつ権利者が、「海賊スパゲッティー」の商標権の効力により、自己の店舗のメニューの用語として、「海賊スパゲッティー」を使用できないということになるのではないか? そうとすれば、「海賊」の実質的な権利範囲が大きく制限されてしまいます。

 さらには、「海賊」の店舗で、たとえば「海賊ラーメン」を主たる提供飲食物とすることが分かっているような場合には、商標「海賊」に加えて、「海賊ラーメン」をも権利化しておくべきなのか? という第3の疑問が生まれます。

 商標「〇〇+役務名」は、いわゆる結合商標の中でも、識別力がないと思われる役務名を含む商標です。現行の特許庁実務では、その商標「〇〇+役務名」と、役務名(ここでは提供食べ物のスパゲッティー)のない商標「〇〇」とが併存することを認めています。そのような取扱いの下、私たち実務家は、商標の類否判断のみならず、店舗の具体的な活動(たとえば、どのような看板やメニューを使うのか、どのような店舗の紹介をするのか、今後の店舗活動の方向性はどうなのか、など)についても、クライアントと密にコミュニケーションを図るのが良い、と考えています。

 弁理士ではあるが、商標法が求める競業秩序の変化についていくことができない小生には、商標における各種の判断がさらに難しくなっています。上に述べた第1から第3の疑問について、的確な答えを出すためには、古典的な商標法の知識だけでなく、特許庁や裁判所の考え方、さらには、現実の店舗活動の詳細についての情報も必要のようです。なお、「役務名」のほか、「商品名」その他の識別力のないと思われる用語を含む結合商標についても、同様に考えることができるのでしょうか? これもまた、さらに検討しなければならない問題です。それらの結合が、結合した商標の商標的機能あるいは意義を高めることができるか、という問題です。

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