知財実務研究

「ステーキの提供システム」の発明を再び考える

 「ステーキの提供システム」について、最終的に特許になったメインの発明は、次のとおりです(その経過については、October 24, 2018付けのコラムで述べました)。

 ここでは、この「ステーキの提供システム」のメインの特許発明のカテゴリーについて、今一度考えてみたいと思います。

 まず、現在の特許審査基準は、「方式」又は「システム」(例:電話方式)は、「物」のカテゴリーを意味する用語として扱う、と明記しています(第Ⅱ部、第2章、第3節の明確性要件の中の記載)。その取扱いによれば、ステーキの提供システムは「物」のカテゴリーに属します。そのような取扱いは、このステーキの提供システムに対する、特許庁における特許審査の第1段階、異議申立てについての審理の第2段階、知財高裁における取消決定請求での判断の第3段階を通して一貫していました。

 しかし、小生は、「システム」という用語を用いる、「ステーキの提供システム」の発明は「方法」の発明である、と理解することが妥当であると考えます。その点、上の【請求項1】について、内容の同一性を保ちつつ、表現を変えた、【別の表現による請求項1】から自ずと理解することができます。

【別の表現による請求項1】
 食形式のテーブルであり、そのテーブルのテーブル番号が記載された札のあるテーブルに、お客様を案内するステップと、お客様からステーキの量を伺うステップと、伺ったステーキの量を肉のブロックからカットし、計量機によってお客様の要望に応じてカットした肉を計量し、上記計量機が、計量した肉の量と上記札に記載されたテーブル番号を記載したシールを出力するステップと、カットした肉を焼くステップと、焼いた肉をお客様のテーブルまで運ぶステップを含むステーキの提供方法あって、
上記お客様の要望に応じてカットした肉を他のお客様のものと区別するための印しとして、上記計量機が出力した肉の量とテーブル番号が記載された上記シールを用いることを特徴とする、ステーキの提供方法

 このステーキの提供システムの発明のカテゴリーが「物」であるか「方法」であるかにより、特許がカバーできる発明の実施の範囲が異なることは勿論です。そのほか、カテゴリーが「物」であるか「方法」であるかにより、特許法第29条第1項柱書に規定する発明該当性の要件のしきい値が変化することが考えられます。複数のステップを含むビジネス手法に対して「札」、「計量機」、「印し」を含む、提供システムの発明は、(本当に正しい判断であったか否かは別にして)結果的に特許法第29条第1項柱書に規定する要件をクリアーするという判断が得られました。しかし、複数のステップに対して、印しを利用して肉を区別するという特徴を加えた提供方法として理解するとき、特徴事項が一般的なものであるために、その提供方法は発明該当性をクリアーするとは判断しにくくなると思いませんか。

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