知財実務研究

意見書に思う

 ある特許出願における意見書の長さに驚きを覚えました。その出願の経過ごとの書類の長さは次のとおりです。
出願時の明細書:6ページ
審査時点の第1回の中間処理の意見書:11ページ
拒絶査定不服審判の審判請求書:35ページ
審判時点の第1回の中間処理の意見書:15ページ
審判時点の第2回の中間処理の意見書:52ページ
(最終的に特許審決)

 この経過の中で、出願時の明細書が6ページであるのに対し、審判時点の意見書が52ページという数値に驚きを覚えます。実際のところ、担当の審判官は、その長さを含む代理人の対応に、何かの驚きを感じ、特許審決を出さざるを得なかったのではないかという感がします。その点、内容を見れば、一目瞭然です。

 このケースに触れることにより、意見書とは何だろう、という疑問がわきました。
 拒絶理由の通知に関する特許法第50条は、「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。」と規定しています。この規定は、審査官にも全くの過誤がないとはいえないので、出願人に対話の機会を与えるものであり、発明の保護に根付いています。この第50条の規定は、第159条において、拒絶査定不服審判で査定の理由と異なる拒絶理由を発見した場合に準用されています。

 意見書の趣旨が、出願人(審判請求人)との対話の手段とすれば、審査官の言である拒絶理由通知書の内容に答える言を含むものが意見書になるという理解が生まれます。拒絶理由通知書は、通常、数ページ、すなわち2~3あるいは5~6ページほどです。とすると、その数字2~6ページに近い長さのページ、あるいは相手の審査官が嫌がらない程度の長さの意見書が好ましい、という考え方が出ます。

 この対話という考え方からすると、上の「52」ページの数値は余りにも大きすぎ、相手を考えない一方的な意見書とは言えないでしょうか。意見書が対話の一つの手段だとすれば、長さだけでなく、内容にも留意すべきです。私たちの作成する意見書には、拒絶理由通知書に書かれた内容の一部をそのまま含んでいたり、応答の補正に伴なう内容をそのまま含む傾向があります。この傾向は、対話の相手からすれば、好感を持てるとは言えないと思います。

 かつては、審査する側は、特許の成立を妨げる側であるという考え方もありましたが、今や、特許法第1条の発明の保護の趣旨を正しく理解する審査官は、出願人と一緒になって、真に保護されるべき発明を保護するという考え方をもっていると思います。したがって、出願人も、意見書を対話の手段として、審査官と一緒になって、キズのない特許の成立を目指すという心構えが妥当である、と小生は確信しています。

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