知財実務研究

中小企業の知財を考える

 下記の図は、特許行政年次報告書2018年版(いわゆる、特許庁年報2018)からの抜粋です。

 この図に関連し、特許庁年報2018は、「近年の内国人の特許出願件数に占める中小企業の割合は15.3%にすぎない。」と述べています。「15.3%」という数値は、2013年における「約12%」に比べれば、わずかながら上昇傾向にあります。2013年当時、米国の約25%、韓国の約15%という対応数値からすれば、日本国の「約12%」は低さが目立つ、とされていました。この点、松下達也、横田之俊:中小企業における知的財産と経営の関係について(公益財団法人 中小企業研究センターの年報2014年度版)という報告書が参考になります。

 上に述べた情報は、一般に、我が国の中小企業の知財活動や出願活動の低さを示す根拠とされます。しかし、これらの情報は、発明は人に根付く、という観点からすれば、必ずしも的確な情報とは言えないと思います。人の観点からすれば、大企業、中小企業の従業員数に基づく議論が欲しいところです。

 その種の従業員数については、総務省統計局の「平成26年経済センサスー基礎調査」が参考になります。それによりますと、大企業1万1,000社の従業員数は1,433万人、中小企業380万9,000社の従業員数は3,361万人です。すなわち、従業員数について、大企業:中小企業=1:2.34になります。「人に根付く」という点から見るとき、中小企業においても、少なくとも大企業とほぼ同じ桁の発明が生まれているはずです。しかし、現実には、大企業(の出願数):中小企業(の出願数)=約22:約4=5.5:1です。

 この現実をいかに解釈すべきでしょうか。「発明は人に根付く」という見方からすれば、企業の大小にかかわらず、人の数に比例した発明が生まれているはずです。そして、それらの生まれた発明をすべて出願するとすれば、大企業(の出願数):中小企業(の出願数)=1:2.34になる、つまり、中小企業においても、大企業と少なくとも同じ桁の出願数が記されるはずです。しかし、現実はかけ離れた結果になっています。

 出願数のかけ離れた現実は、なぜ生じているのでしょうか。関連する資料や文献を探しても、その疑問に対する明確な回答を見出すことができません。しかし、その疑問に対する回答には、少なくとも次の3つの要因が含まれていると考えます。
・一つに、出願するための知財活動に要する経済的な要因
・また一つに、生まれているはずの発明を見出すことができないという要因
・さらに一つに、特許取得によるメリットを見出しがたいという要因

 以上の3つの要因は、世の中に認められるための特許制度を考える課題と直結しています。特許実務家は、それらの要因の打開策を考えることが必要であり、しかもまた、それらの要因を通して、自己の実務を見直すことができるのではないでしょうか。

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