知財実務研究

クレーム作成に思う

 近頃、作成したクレーム(特許請求の範囲の請求項)について、アドバイスを求められることがあります。アドバイスを求める人の多くは、クレーム作成の経験に乏しい人です。

 それらのクレームは、共通したキズを備えることがほとんどです。そのキズとは、「こうしたい」という願望やネライ、または効果は記載されているが、そのために必要な技術的事項が記載されていないことです。以前の規定、「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」からすれば、明らかに記載不備になります。また、現行の規定、「特許を受けようとする発明が明確であること」からは、明確性の点からの記載不備になることでしょう。

 なぜ、このような記載不備が生まれるのでしょう。クレームには、「特許を受けようとする発明」を記載しますが、前記した多くの人にとって、発明とは技術的効果を得るためのものです。その点から、「このような技術的効果」を得るという内容を書いていると思われます。そのようなアドバイスを求める人に対し、「そのような技術的効果はどうして得られるのですか?」と質問すると、だれもがとまどう傾向があります。経験的にも、「願望やネライ、または効果」すなわち、「技術的効果」については、比較的に取り上げやすい事項です。しかし、「そのためにどうしたか」という事項については、なかなか的確な答えを出すことができません。その答えを出す難しさは、一般に、多くの発明者は、求める技術的効果については細かく検討しているのに対し、そのためにどのような対応をするかについては詳しくは検討していないことから生まれている、と思われます。

 しかし、発明者の一部には、自己が求める「技術的効果」を得るために必要な事項について、自然法則的な視点から考える人がいます。活用する自然法則を見出すことは、自己の発明が活用する法則を見出すことであり、自己の発明と会う、あるいは自己の発明の姿を明らかにする入口になります。そのような発明者は、自己の発明を客観的に説明することができるし、自己の発明の位置づけを正しく認識することができます。

 クレームの作成は、比較的に見出しやすい「技術的効果」を、「そのためにどうしたかという事項」に置き換える作業ともいうことができます。置き換える作業は、作業をする人の視点、考え方、あるいは発明の背景により色々変化することになります。クレーム作成には、置き換えという難しさがある一方で、色々変化するという変化性の面白さがあります。置き換えに力を入れなければ、クレーム作成の喜びを得ることができません。クレームを作成する上で、置き換えに悩み、楽しむ基本を忘れないようにしたいものです。

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