知財実務研究

発明とは何だろう-その3

 (発明をいかに表現するか)

 特許法は、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作」と捉えています。その発明をいかに表現すべきでしょうか。この発明の表現は、保護を受けるべき発明を俎上に挙げるための、基本的な条件の一つです。

 特許法が定義する発明の規定内容の観点からすれば、次のような各事項を明らかにすることにより、保護を受けようとする発明を表現する手が考えられます。
a どのような自然法則を利用するのか
b どのように利用するのか
c どのようなネライをもった技術的思想なのか
d そのネライをどのように達成するのか
e どのような点から創作といえるのか

 これらの事項のうち、aとbは発明のメカニズム、cは解決すべき課題、dは構成に関する内容、eは新しさ(保護に値する価値)に関する内容、であると思います。発明を明確にするためには、本来的に、これらの各事項が必要であります。

 しかし、特許法は、保護を受けるべき発明を特定するために、それらのすべての事項を求めてはいません。

 平成5年改正の前においては、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載」するとし(改正前の特許法第36条第5項)、また改正後の現時点では、「特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載」(現行の特許法第36条第5項)との規定になっています。

 改正前の「発明の構成に欠くことができない事項」については、発明の要素である、目的、構成、効果の中の一つである構成、つまりは、上に挙げたdのみを記載することを求めていました。そしてまた、改正後には、「特許出願人が必要と認める事項」のすべてを記載することを求めています。いうなれば、上に挙げたa-eの中で、必要とする事項のみを記載することを求めているのです。

 これら改正前、改正後のいずれの規定も、保護を受けようとする発明を明確に表現するためには、不十分であるということができます。なぜなら、それらは、法が定義する発明に必要な事項の一部を表現することを求めているだけであるからです。特許を愛する者は、特許法の制度趣旨を考慮しつつ、法規定の不備を補填しなければいけないと思います。まずは、保護を受けるべき発明をいかに表現すべきかを常に考え続けること、そしてまた、実務においては、より明確な表現方法を取り入れること、さらには、法制度の不備について声を上げることも必要ではないでしょうか。表現を実践しない法制度関係者には、そのような不備を見つけることができないからです。

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