知財実務研究

発明とは何だろう-その2

 発明の一つのタイプとして、「用途発明」があります。この「用途発明」をテーマに、平成31年3月28日に第4回の“企業関係者と弁理士の知財研究会”が実行されました。そこで、「用途発明」の観点から、発明を考えてみたい、と思います。

 特許庁の審査基準が定義する「用途発明」は、ある物の未知の属性を発見し、この属性により、その物が新たな用途への使用に適することを見出したことに基づく発明です。また、ある裁判例のそれは、既知の物質について未知の性質を発見し、当該性質に基づき顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とするものとなっています(平成28年(ネ)10023号)。これら二つの定義は、未知の属性、あるいは性質と、新たな用途あるいは新規な用途の創作という点で基本的に共通しています。しかし、ある物が既知か否かの点、および用途に対する見方(一方は使用に適するという見方、他方は顕著な効果を有するという見方)の点で少し異なります。

 このような「用途発明」は、通常の発明を特定するための構成的な事項Cに対し、用途を特定するための用途事項Uが付加的に加わることにより、発明内容が特定されます。とすれば、クレームを解釈する場合、用途発明においては、通常の発明に必要な構成的な事項Cの検討のほか、用途事項Uをも検討することが必要になります。別に言うと、通常の発明はC(たとえば、X+Y)で内容を特定できるのに対し、用途発明はCのほか、Uの観点からもさらに検討(つまり、C+U)することになります。

 小生は、機械や電気のような物理的な発明に関与することが多く、Cの作成や解釈に悩む実務を行っています。その点、「用途発明」では、Cに加えてUの観点からも検討が必要であり、考えるロードが増すのではないのかな、と考えます。特に、Uについては、「~用」と短くかつ抽象的な言葉で表現されることから、必然的に解釈を難しくすること必至かと思われます。

 そのようなUの解釈の難しさから、特許実務家にはUを明確に表現することが求められます。より分かりやすく言うと、「用途発明」における未知の属性や性質、そしてまた、適用範囲をより明確に特定することが求められることと思います。Uの記載が明確でないとすれば、「用途発明」の技術的範囲があやふやになり、属否の判断を客観的に行うことが困難になると考えるからです。

 先に述べた研究会において、パテント2017年1月号の論文〔高石秀樹、「用途発明」の権利範囲について(直接侵害・間接侵害)〕の次の言及が議論の場にあがりました。
用途以外の発明特定事項に特徴がある発明については、当該用途に使用されるものとして販売されなくても(直接)侵害になりうる
用途以外の発明特定事項に特徴がない発明については、当該用途に使用されるものとして販売等しなければ(直接)侵害にあたらない

 このような言及は、用途発明の特質、つまり、用途発明では、通常の発明における構成的な事項Cに加えて、用途事項Uについての検討が必要なことから、用途事項Uについての検討を緩和する考え方である、と理解することができないでしょうか。

 「用途発明」を検討すると、いろいろな問題に突き当たります。たとえば、Q1:「用途発明」は、既知の物に対してのみ生じるものと考えるべきか、あるいは、未知の物にも生じるものと考えることができるとすべきか、Q2:「用途発明」になぜ特許を認めるのか、Q3:医薬や食品以外の物理的なモノにおける「用途発明」はいかに、Q4:「用途発明」は物の発明か方法の発明か、あるいはその他の観点からの発明も考えられるか、Q5:「用途発明」における“未知の属性”、“新たな用途”をいかに特定するか、Q6:既知の物の既存特許と、用途限定特許との関係はいかに、Q7:国際的なハーモの観点からはいかに・・・など、考えるべき課題はたくさんあります。小生は、特に、Q2について、今後の弁理士活動の課題の一つにしたいと考えています。

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