知財実務研究

「除雪具」の発明把握

 テレビ番組の中で「除雪具」のアイディア商品についての紹介がありました。それが、特許第6282707号に対応するものであることは、すぐにキャッチしました。そこで、発明の把握を訓練する意味から、早速、その特許公報を読みました。請求項1と、基本的な構成と、作用を示す図を記します。

 この除雪具は、長い柄40と、その柄の先端の雪かき部30とを備え、雪かき部30は、水平プレート11、一対の垂直プレート15、雪を滑落させるための板状部材20を含みます。特許におけるポイントは、板状部材20が、「折り畳み可能な蛇腹状」であることにあるようです。板状?であるがゆえに、薄いシート状のものと比べて横にずれたりすることが少ないようです。また、蛇腹状?であるため、板状部材が上下に揺れ動き、雪を滑落させやすいようです。ここで、「?」は、その限定により内容が明確かな?という疑問からです。

 ところで、この特許明細書には、実用新案登録第3177264号公報が先行技術として提示されています。その先行技術の請求項1と、基本的な図を記します。

 この先行する関連技術も、長い柄1の先端の雪かき部2で雪を切り、シート7に滑らせて降ろすという技術です。違う点といえば、切った雪を粉砕するための粉砕用カッター12を備えている点があります。

 この相違点に着目した場合、粉砕用カッターがない場合、切った雪が長い柄に当たるという問題があることに気づきます。その点、特許技術では、どのような対応をするのでしょうか? また、切った雪を滑らすという考え方として、両技術は共通しています。薄い?シートと板状部材という違いはありますが、特許技術には、先行する関連技術に基づいて想到容易ではないか、という疑問も生じます。なぜなら、雪を切り、切った雪を滑らすという考え方自体が公知であるからです。審査官は、どのように考えたのでしょう。

 このような除雪具については、雪を適正に切るという技術的課題と、切った雪ブロックを適正に滑り落とすという技術的課題が考えられます。そのような技術的課題の視点から見れば、雪を切るためのカッターに対する「一対の」という条件、シートあるいは板状部材に対する「折り畳み可能・蛇腹状」という条件についての検討が必要になります。そして、長い柄と、雪かき部との関係も大事な検討事項です。知財専門家は、それらの検討にこそ、力を注ぐべきではないでしょうか。

 そして、何よりも大事なことは、身近で理解しやすい技術こそ、発明を把握する訓練の相手として大事にすべきではないでしょうか。

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