知財実務研究

「美肌ローラ」の発明から学ぶ-はじめに

 「美肌ローラ」は、特願2007‐324077号として特許出願され、特許庁の審査において特許第5230864号として特許が認められました(第1段階)。この特許に関して、損害賠償請求事件(第2段階)および無効審判事件(第3段階)が起きました。第2段階の第1は、大阪地裁における平成28年(ワ)第4167号の原審、ついで、第2段階の第2は、知財高裁における平成29年(ネ)第10086号の控訴審です。原審では、「美肌ローラ」の発明について進歩性を認めず、結果的に原告(特許権者)請求を棄却しました。それに対し、控訴審では、原判決を取り消し、控訴人(特許権者)の請求を一部認めました。また、無効審判は、損害賠償請求に対する対抗手段として、「美肌ローラ」の発明の進歩性について争われ、結果的には、審判請求不成立の判断がなされました。被告(控訴人)は、その請求不成立の審決の取消請求を求めることなく、審決は確定したようです。

 第1段階~第3段階の流れを検討する中、いくつかの疑問が生じました。その疑問の根源は、「美肌ローラ」の発明のクレームの妥当性です。適正な特許制度を求める立場からすると、「美肌ローラ」のクレームには記載不備が含まれているのではないか、と考えざるを得ません。また、同一の証拠および事実に基づくと思われる進歩性の判断にもかかわらず、裁判所(原審)における判断(進歩性にキズあり)と、特許庁審判における判断(進歩性にキズなし)とが全く反対です。その理由が知りたいところです。さらには、そのような原審と審判との判断の乖離の中、控訴審での対応、特に、特許法第104条の3に基づく控訴人の主張に対する判断はいかに、という考える課題もあります。

 複数のおもしろい疑問や考える課題を抱えつつ、以下、第1~第3の段階を追って検討を進めていきたい、と思います。

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