知財実務研究

商標権の禁止権

 下記の図は、特許庁のHPからの抜粋です。

 この図に示すように、商標権には専用権(商標法第25条)と禁止権(商標法第37条)とがあります。青本流に表現するならば、専用権における侵害を類似の商標および商品に拡大することによって、商標権の保護に完全を期そうとすることにあるようです。ここで、意匠権については、「登録意匠およびこれに類似する意匠」までが専用権として規定されていますが(意匠法第23条)、それらの規定ぶりの違いが何ゆえに出ていると考えますか? 弁理士試験の受験者だけでなく、実務家にとっても、そのような思考は大事だと思います。

 商標の実務家は、近年に至り、商標権の禁止権の範囲が縮小され続けていることを感じています。その主因は、類否判断の基準の変化にあることは確かです。たとえば、ごく最近の審決(不服2017‐13947)において、第30類「菓子、パン」を指定商品とする「SNOW WHITE」に対し、第30類「アップルパイ」を指定商品とする「スノーホワイトアップルパイ」が、非類似であるとの判断がなされています。

 一般的な考え方からすれば、「アップルパイ」は商品「アップルパイ」を示す表示であるため、商品「アップルパイ」に対しては、商標「スノーホワイトアップルパイ」の中の「スノーホワイト」の部分を要部として類否判断をすることが許されるはずです。その点、最高裁昭和37年(オ)第953号、最高裁平成3年(行ツ)第103号、最高裁平成19年(行ヒ)第223号などが教えるところです。すなわち、「標準文字で一連に記載されたものであっても、それがいくつかの文字等を組み合わせた結合商標と解されるもので、かつその一部が需要者に対して、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである場合やそれ以外の部分から出所識別標識としての呼称、観念が生じないと認められる場合などには、当該一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否判断をすることも許される」という論理です。

 しかし、該当の審判においては、いわゆる要部観察は採用されることなく、『本願商標から生じる「スノーホワイトアップルパイ」の称呼と引用商標から生じる「スノーホワイト」の称呼とは、音数において明らかな差異があるから、両商標は、称呼上、相紛れるおそれはない。・・・』と判断されています。
 小生には、この審判における論理において、いわゆる要部観察を取り入れない理由を理解することができません。皆さんは、いかにお考えでしょうか? また、このような禁止権の縮小傾向に応じて、実務家としてどのような権利取得をすべきでしょうか?

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