知財実務研究

特許出願の分割を考える

 特許出願の分割について、驚きの流れに出くわした。白色光を得るための発光装置の特許出願P(特願平10-508693号)の経過です。その経過は、次のとおりです。

 もとの出願Pに対し、第1~第10世代にわたって、18件の分割出願(頭にDを付けています)がなされています。図の下欄の期間目盛り(もとの出願時点0から存続期間満了の20まで)が示すように、第10世代の分割時点は、元の出願Pの出願日から19年近く経過しています。特許出願の分割を行うためには、もとの出願からの流れを継続させることが必要です。その継続の流れを、図中、赤で示すもとの出願Pを起点に、青で示しています。詳しくは見ていませんが、分割ができるという規定の文言を生かして、もとの出願Pを、形式的に、規定された存続期間一杯にわたって係属させるようにしているようです。

 また、特許出願の分割には、別の形態もあります。ips技術に関する特許出願であり、PCT経由のもとの出願p(特願2007‐550210号)の経過です。その経過は、次のとおりです。


 この場合には、図の下欄の期間目盛り(もとの出願時点0)から分かるように、もとの出願pの出願時点から3年以内に6件の分割出願が行われています。それらの分割出願は、もとの出願pが権利化される前に行われています。内容的に見ると、もとの特許出願pにおけるクレームの一部の要件を外したり、カテゴリーを変えた見方をすることにより、特許全体としての技術的範囲を広げようとする努力を見出すことができます。

 以上、分割出願についての二つの形態を形式的に見るとき、特許法第44条が規定する「特許出願人は、・・・二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」という内容を考えざるを得ません。分割すべき出願における発明は、すべてもとの特許出願に記載された内容に含まれます。クレームや明細書を作り出す立場からすると、一つの出願には、基本的に、一つの考え方に基づく発明を記載することが一般的です。クレームを作成するに先立ち、基本にすべき考え方を何にするかを熟考します。基本にする考え方を何にするかにより、クレーム内容が変化するし、クレームをバックアップする明細書の記載の仕方も変化するからです。

 そのような熟考した結果に基づいて、クレームや明細書を作成する場合、戦略的にその時点で複数の発明に対し、当初から複数の出願で対応すると判断することもあります。そのような対応と分割出願で保護を求めることとの比較をすると、分割出願には留意すべき事項があることに気づきます。特定した一つの考え方に基づいて、クレームや明細書を作成するとき、一般的に、クレームや明細書の記載内容は、その特定した考え方に紐づけされ、内容的に制限されるのが常です。もとの出願内容は、そのような内容的に制限される傾向があります。もとの出願内容の範囲内で、クレームを作成する分割出願には、技術的範囲を広げるという面で制約があるし、技術的範囲の周辺に弱い部分を生じる可能性があります。

 そのような観点から、発明についての当初の把握を第1に大事にすること、分割出願は、二次的な発明の保護手段であることを忘れてはいけない、との思いを抱くのは小生だけでしょうか。

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