知財実務研究

脇下汗吸収パッド事件に学ぶ‐付録

 「脇下汗吸収パッド事件」を紹介する中で、【第2の学び】において「考案・発明の把握に少し納得ができません。」という言及をしました。その言及には、「吸収面の確保」をする手法として、二次元的に捉える考え方と、三次元的に捉える考え方、あるいは、吸収能力の異なる材料を活用する考え方、または、それらを組み合わせる考え方があります。

 発明者は、一般的に、それらの考え方の一つを中心に自己の発明を語るのが常です。そして、発明者の話を聞く知財担当者には、発明者の話を単にまとめるだけではなく、それを変形、あるいは拡大することが求められます。これは、発明者の役割と、知財担当者の役割とは互いに異なるからです。ですから、知財担当者の立場の者は、まずは、自己の役割について常々考え続けることが必要ではないでしょうか。

 今回のケースの場合、二次元的に捉える考え方からしても、脇の甘さが目立ちます。

 クレームでは、「3つの彎曲を連ねた縁形状」という特徴を上げていますが、「3つ」は限定しすぎの感があります。

 前回の加工した図をさらに加工して示します。

 前回述べたように、今まで、この種のパッドの身頃添付け部(3)は、黄色で示すように三日月形状でした。そのため、明細書によれば、「袖繰りに層パッドの中央部では十分な汗の吸収面を確保することができるが、前端及び後端部に至るに従い吸収面積が急激に減少してしまい、脇の下全体に亘る吸収面の確保が困難であるという問題点」がある、とのことです。

 この問題点に加え、「デザイン上の美観」をも考慮し、三日月形状よりも突き出した3つの彎曲を連ねた構成A1,A2,A3とした発明(考案)の把握が生まれました。

 しかし、もともとの問題点からすれば、突き出した3つの彎曲のうち、中央のA2は不要のはずです。なぜなら、吸収面積が不足する部分は、前端部A1、後端部A3だけであるからです。とすれば、次のような把握が自ずと生まれることになります。

(1)(少なくとも)前端部A1、後端部A3において、仮想の三日月形状よりも突き出した形状をもたせること

(2)中央部A2にも仮想の三日月形状よりも突き出した形状をもたせ、3つの突き出した彎曲をもたせたこと

 ここで、(1)の把握は、前回にネット検索した次のパッドを含む可能性があると思いませんか? この点からも、知財担当者あるいは知財専門家による発明の把握の大切さが分かるのではないでしょうか。

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