知財実務研究

発明の把握を考える-その2

 「発明の秘訣」を語る題材の中に、コーヒーフィルターの発明があります。この「コーヒーフィルター」の発明を通して、発明の把握を考えます。
 対象の発明は、二つです。一つは、実用新案出願公告昭52‐25427号公報に記載の第1の先行発明、もう一つは、実用新案出願公告昭60‐7626号公報に記載の第2の後行発明です。

 まず、それらの各公報を参照しながら、第1の先行発明、および第2の後行発明を明らかにします。その手法として、各公報上の基本的な図と、使用された用語をできるだけ使用します。それによって、発明の捉え方の変化性(同じ発明でも、人によって捉え方が異なる)を感じ取ることができるだろうし、発明の捉え方が発明の財産的価値を高めること、別に言うと、発明の捉え方の中にこそ各専門家(弁理士)の腕の見せ所があることを知りうるからです。

第1の先行発明:
   52‐25427号公報の第1図

 この第1の先行発明では、「使用時におけるフィルターのケースからの取出し、開口あるいは使用後のドリッパーからの取出しを用意かつ簡便にするために」、『開口上周縁の適所に摘み突片2を突設、かつ、摘み突片2の対向上周縁に欠所3を切込み形成』しています。
 この発明では、フィルターの収容ケースからの取出し、開口、ドリッパーからの取出しまでを通して「突片2」が有効に機能すること、を謳っています。『欠所3はそれらの効果を一層向上』と言っています。開口上周縁より突き出す摘み突片2と、対向する位置の、開口上周縁より下に切り欠いた欠所3との両方が必須という捉え方のようです。
 この発明の基本的な考え方として、開口上周縁の対向箇所が、一般的に同じ高さに重なっていることをなくす、と捉える人もいるかもしれません。とすれば、突片2、欠所3の一方は不要と考えることもできます。また、別の人は、欠所3について、突片2の実質的突き出し量を大きくするもの、と理解するかもしれません。それらの理解の仕方により、クレームされるべき発明は、いろいろ変化します。そのような変化をコントロールしつつ、発明の把握を楽しむことができます。

第2の後行発明:
   60‐7626号公報の第1図、第2図

 この第2の後行発明では、「フィルター本体の上端周縁を開口させる場合、対向上端周縁間に指を差し込んで開口しなければならず、しかも各上端周縁がぴったりと接合された状態にあるので指の差し込みが困難」、その問題を解決することが目的のようです。
 そのため、第2の後行発明では、「上端周縁2の中央部付近に、摘み片3に隣接して欠所4を設け」ています。この第2の後行発明は、前記の第1の先行発明をさらに改良し、指の差し込みを不要にするといっています。
 したがって、第1および第2の両発明は、摘み片と欠所とを備える点で共通しているのに対し、摘み片と欠所の位置が互いに異なります。
 ここで、上端周縁の同じ側に位置する摘み片と欠所とが「隣接」しているといっていますが、全くの隣接に限られるのか、数センチ離れていても良いのか、解釈に苦しみます。その点、第2図に示すように、一方の手指で一方側を摘まみ、他方の手指で対向側を摘まむことにより、開口することが分かります。とすれば、隣接は、一方の手指、他方の手指が干渉しないような位置にあることと理解することができます。また、摘み片3に隣接する欠所4は、対向側に仮想の摘み片を作り出す役目があると、理解する人もいることでしょう。その理解によれば、同じ側の欠所4は、対向側の隣接した位置の、別の摘み片3’に代えることもできる、という理解も生まれます。摘み片、欠所の機能や役目によって、発明はいろいろ変化することになります。

 以上のように、発明を把握する人は、いろいろな変化性を楽しみながら、創造的に発明を把握することができます。

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