知財実務研究

知財の存続期間に思うこと

 創作にかかわる主な知的財産権の存続期間(権利が生き続ける期間)は、次のとおりです。

特許権:特許出願の日から20年(特許法第67条第1項)
実用新案権:実用新案登録出願の日から10年(実用新案法第15条)
意匠権:設定の登録の日から20年(意匠法第21条)
〔著作権:創作の時に始まり、原則、著作者の死後50年(著作権法第50条)〕

 産業立法に関する権利の存続期間は、現時点で最大20年です。この20という数値に関連し、TRIPS協定33条は、「保護期間は、出願日から計算して20年の期間が経過する前に終了してはならない。」と規定しています。同じ20年でも、特許権の存続期間よりも意匠権のそれの方が長いと感じる実務家がいます。それは、特許権の始期よりも意匠権のそれの方が一般に早く、そのため、権利の実質的な存続期間が長くなるからでしょうか。その点、早期審査の請求制度により、そのような違いをなくすこともできます。

 しかし、産業立法に関する権利が存続期間をもつことには変わりありません。知財の実務家として、この存続期間にどう対応、あるいは対抗するかが一つの課題です。『技術には積み重ね性がある』とは、よく言われます。確かに、技術の流れとして、先の技術の上に立つ、いわば先の技術の土壌の上に後の技術が立つ傾向があります。したがって、後の技術を適正に把握するためには、先の技術を適正に把握することが大事になります。先の技術の把握の仕方により、後の技術(特許を受けるべき発明)が別のモノになることもあります。発明の把握は、把握すべき発明の内容だけでなく、元となる先の技術の把握も大いに関係します。その点、後の技術が(改良技術ではなく)全くの創作である場合も同様です。なぜなら、技術構成的には全く新しい技術であろうと、そのネライの点では先の技術と関連することが多いからです。存続期間に対抗するための最も一般的で大事な策は、適正な権利の取得を繰り返すことでしょうか。

 ここで、著作権の存続期間が、特許権などのそれに比べて非常に長いことに気づきます。とすれば、著作権と特許権、著作権と意匠権とのように、異種の権利によって二重の保護を受けることも考えられます。その観点から、注目すべきTRIPP TRAPP判決(平成27年4月14日判決言渡、平成26年(ネ)第10063号 著作権侵害行為差止等請求控訴事件)があります。その判決は、幼児用椅子について、応用美術としての著作物性を認める一方、結果的には、侵害を認めてはいません。応用美術は意匠で保護、という通常の考え方からすれば異質な考え方であり、いろいろ議論されているようです。

 知財の実務家は、この判決を今一度繙き、著作権と意匠権との二重保護を考えるまでに至らずとも、特許権、実用新案権、意匠権との相協力に基づく複眼的な保護を再考することができます。

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  1. このコラムの趣旨
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