知財実務研究

出願の低迷を考える

 特許庁のHP上の統計速報から、最近の出願状況を見ます。

 平成30年1月~4月の数値に着目します。特許は、108,498であり、昨年の数値111,646に比べてほぼ同等(あるいは低下傾向)です。とすれば、一年間の総出願件数として、32万前後という横ばいが予想されます。実用新案、意匠も低い値での横ばいです。ただ、商標は、特許に次いで大きな数値です。

 このような数値を前にして、考えることがあります。第1には、出願をコア業務とする弁理士への影響、特に専門業務を扱う弁理士のステータスの低下を心配します。同時に、この出願低迷の原因を模索せざるを得ません。出願低迷の原因追及は、知財の一大テーマであると思います。

 日々特許公報や審判決例に触れる弁理士の一人として、出願低迷の原因の一つとして、知財専門家の実務力低下を感じています。その点、特許を例にして問題を提起しますが、他の意匠や商標でも同様の問題があるのではないでしょうか。

 特許では、特許を受けるべき発明を明らかにする、クレームや明細書の記載が問題です。発明者は、一般に、自己が創案した技術を発明として捉えることに困難を覚え、しかもまた、創案した技術を的確に表現することにも困難を覚えるともいわれます。勿論、発明者の中には、それらの考える技術および表現する技術に長けた人もいますが、それは例外です。

 そこで、「知財専門家」による第1の誤解は、発明者が創案した難しい技術をそれなりに、あるいはできるだけ詳しく表現することが一番大事だと考えることです。そのような表現は、単なる技術の表現にすぎず、AIなどの機械が得意にする作業だと思いませんか。

 知財専門家が表現すべき内容は、単なる技術ではなく、技術的思想であり、しかもまた、先行技術を越える技術的な特徴をもつ有用な技術です。したがって、技術的思想の観点からの言及、特には、個性的な見方が伴う言及が必要であるし、何を特徴的な技術事項とするかという特許的な見方を伴う把握が必要ではないでしょうか。そのような観点や見方があるからこそ、弁理士の喜びおよびやりがいがあるのではないでしょうか。

 出願低迷の現状を打破するため、私たち知財専門家は、『発明』および『特許を受けるべき発明』の意味をじっくりと検討すべきである、と考えます。知財専門家が、難しい技術を単に表現しているだけでは、「弁理士の手数料は高過ぎる」といわれるし、この現状を打破することはできません。

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