知財実務研究

商標登録出願の分割要件の強化

 「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が、平成30年5月23日に可決・成立しました。その中に、改正商標法第10条第1項の規定があり、その施行日は平成30年6月9日です(商標登録出願の分割要件が強化されます/経済産業省 特許庁)。

 平成30年改正商標法第10条第1項に基づく商標登録出願の分割の要件は、次のとおりです。改正により、(5)の要件が加わるようです。

(1)親出願が審査、審判若しくは再審に係属していること。
(2)子出願が、親出願の商標と同一であること。
(3)子出願に係る指定商品・指定役務が分割直前の親出願に係る指定商品・指定役務の一部であること。
(4)子出願に係る指定商品・指定役務が、子出願と同時に手続補正書によって親出願から削除されていること。
(5)親出願の出願手数料が納付されていること。

 この改正の背景の一つとして、「親出願の手数料を納付せずに」分割出願をする人がいる、と聞きます。確かに、この(5)の要件により、そのような分割出願を適正な土俵に上げずに済ますことができます。

 しかし、少し変だとは思いませんか? 第1に、この(5)の要件を加えるとすれば、同時に、(6)子出願の出願手数料が納付されていること、という要件も追加されるべきです。その点、片手落ちの改正ではないでしょうか。

それ以上に、(5)の要件は、本来的に、(1)の要件に吸収される、あるいは潜在的に含まれるものである、と考えるべきです。とすれば、前記した不適正な分割に対しては、(1)の要件の運用で対処すべきである、という考え方が出てきます。

 小生は、(5)の要件を加えるという改正を肯定的には理解することができません。複数ある分割の要件の中で、(5)の要件だけが浮いてしまっているからです。(1)~(4)の他の要件に重みを感じるのに対し、追加の(5)の要件に、同様の重みを感じることができません。

 このような規定上の問題だけでなく、日々の知財実務の中で、私たち知財の専門家は、それぞれの条件あるいは要件の重みや意義を考えつつ、実務にあたるべきではないでしょうか。

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