知財実務研究

KSR判決の再考-関連する第2の特許文献(Rixson特許)

 関連する第2の特許文献は、USP第5,819,593号のRixson特許です。その’593号特許のFIG.1を参照しながら、Rixson特許が示す内容を検討したいと思います。

 ’593号特許の図1を、下に示します。図の理解を容易にするため、大事な部分の名称、色を添えてあります。

 Rixson特許は、ドライバの身長の大小に応じて、ペダルの位置を前後に調整可能な技術です。その点、この特許は、背景技術において、座席シートを前後動に調節する場合と、ペダル自体の位置調節との関係に触れています。このRixson特許は、ブレーキやスロットルなどの従前のケーブルを含む機械的機構に対し、電気的な信号に基づく制御を行っています。すなわち、特許では、”electronic or drive-by-wire signal in response to pivotal movement of the pedal assembly”と表現し、ペダル装置の回転に応じて電気信号を生じることを明記しています。ここで、”drive-by-wire”とは、運転者の操作力を機械式に制御部分に直接伝えるのではなく、電気信号としてワイヤあるいはハーネスを通してアクチュエータを動かすシステムです。

 Rixson特許では、ペダル48およびペダルアーム46を含むペダルアセンブリ16は、キャリアアセンブリ12上、回転軸50によって支持されています。そして、ペダルアセンブリ16を支持するキャリアアセンブリ12は、ガイドロッド10cを含むサポート構造10にガイドされつつ、前後に移動可能になっています。サポート構造10は、ダッシュパネル22、つまり車体側に固定されています。

 Rixson特許において、ペダルアセンブリ12のペダル48を踏み込みと、回転軸50の回転量をポテンショメータ60が検知し、あるいはアウトレット60dから電気信号として出力します。

 このRixson特許は、ペダル48の踏み込みによる回転軸50の回転量に応じる電気信号を出力し、その出力によりスロットルを適正に制御することを示しています。したがって、Rixson特許は、問題のクレーム4の発明の構成中、もう一つの関連文献1であるAsano特許が示さない、電子スロットル制御技術の構成を示していることが分かります。

 そこで、次回においては、Asano特許とRixson特許との組合せが自明あるいは容易であるか否か、言い換えると、問題のクレーム4の発明が非自明性の要件を充足すると判断すべきか、あるいは逆の判断をすべきか、について考えたい、と思います。

関連記事

  1. 「ステーキの提供システム」の発明から学ぶ-その1
  2. ゴルフ用ボールマーカー事件に学ぶ
  3. 脇下汗吸収パッド事件に学ぶ‐付録
  4. KSR判決の再考-はじめに
  5. 商標権の禁止権
  6. KSR判決の再考-おわりに
  7. KSR判決の再考-問題のクレーム4の発明/非自明性の争点
  8. KSR判決の再考-問題のUSP
PAGE TOP