関連する第1の特許文献は、USP第5,010,782号のAsano特許です。その’782号特許のFIG.1を参照しながら、Asano特許が示す内容を検討したいと思います。
’782号特許の図1を、下に示します。図の理解を容易にするため、大事な部分の名称、色を添えてあります。
Asano特許は、ドライバの身長の大小に応じて、ペダルの位置を前後に調整可能な技術です。その点、USPの背景技術からも明らかです。このAsano特許は、ペダルが関係する車両の操作システムとして、ブレーキ、アクセル、クラッチなどを示しています。
Asano特許では、特に、ペダルを前後に調整した際の、ペダルフィーリングの問題を解決することを課題にしているようです。
上の図は、ブレーキ作動に適用した実施例を示し、ペダルアーム38の一端のパッド39を踏み込むことにより、ブレーキ作動ロッド26を通してブレーキを作動する場合を示します。ドライバの身長の大小に応じて、ペダルアーム38を前に出した状態(実線)と、後ろに下げた状態(鎖線)とを示しています。ペダルアーム38は、ピボットピン6を支点に回転しますが、回転支点であるピボットピン6は、車両側の固定ブラケット2に支持されています。したがって、ペダルアーム38が前後動するとき、ペダルアーム38が主体のペダルアセンブリの回転支点は不変あるいは不動です。
このAsano特許は、ピボットピン6を中心に回転可能な三角形状のレバー4のほか、レバー4に連結されたZ形状の調整レバー12、さらに、調整レバー12に連結されたリンク部材20を備えます。それらのレバー4、調整レバー12およびリンク部材20によって、前後調整に伴うペダルフィーリングの問題を解決しているようです。
Asano特許は、別の実施例であるアクセルの場合にも、ペダルパッド39の踏み込みがあると、機械的なケーブルあるいはロッドを通して、車両のブレーキやスロットルを制御することを示しています。
したがって、このAsano特許は、ドライバの身長の大小に応じて、ペダルアームを適正に前後動させて調整することを示し、その前後動調整の間に、ペダルアームの回転支点を不変にすることを示しています。言い換えると、Asano特許は、問題のクレーム4の発明の構成中、電子スロットル制御部を除くすべての構成を示していることを理解することができます。次回は、もう一つの第2の特許文献(USP第5,819,593号のRixson特許)を検討する予定です。
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