問題のUSP第6,237,565号特許のクレーム4について、主要な図面を参照しながら、技術的な特徴を確認しよう。なぜなら、非自明性あるいは進歩性を検討するとき、検討対象の発明、および関連文献の各発明、それらの両方を理解することが大事ですから。
’565号特許の図2を、下に示します。図の理解を容易にするため、大事な部分の名称を入れ、部分的に色を添えます。
この図2は、ドライバの身長の大小に応じて、ペダルアーム14を前に出した状態(実線)と、後ろに下げた状態(鎖線)とを示しています。ペダルアーム14は、ガイドロッド62にガイドされつつ前後動しますが、その移動の間、ピボット24の位置は不変あるいは一定です。
ピボット24は、車両構造20に関して可調整ペダルアセンブリ22を回転可能に支持しています。その点、黒字で示すサポート18、ブラケット46、ケーブルアタッチメント78は、車両構造20に対して、いわば一体です。
前後の位置調整を終えたペダルアーム14を踏み込むと、ペダルアーム14は、ピボット24の軸26回りに回転し、ピボット24に応答して電子スロットル制御装置28を作動します。
ここで、予告になりますが、この特許発明の非自明性について、基本的には、二つの特許文献が問題となりました。一つは、USP第5,010,782号のAsano特許です。Asano特許は、USPTOでは何ら引用文献として挙がることがなかったようですが、裁判の段階で初めて取り上げられたようです。このAsano特許は、ドライバの身長の大小に応じるための技術、すなわち、ペダルアームを適正に前後動させて調整する技術を明らかにしているとのことです。そしてまた、Asano特許は、前後動調整の間に、ペダルアームの回転支点を不変にしているようです。言い換えると、Asano特許は、問題の特許の内容中、電子スロットル制御部を除くすべての構成を示す立場にあるようです。
もう一つの特許文献は、USP第5,819,593号のRixson特許です。Rixson特許は、Asano特許が示さない電子スロットル制御部を示しているようです。そこで、問題の’565号特許は、Asano特許とRixson特許とを組み合わせることにより、非自明性の要件を欠くという論理が生まれることになったわけです。その論理における一番の争点あるいは検討事項は、二つの特許の組合せが自明あるいは容易であるかの点です。次回以降、その点を具体的に探ることになるでしょう。
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