知財実務研究

KSR判決の再考-問題のUSP-その2

 前回の5月19日付の小論の中で、「その3の考え方が、その1、その2における特定のピボットの域を超えたものをもたないのではないか」という疑問を提起しました。ここでは、その疑問について、考えてみました。

 その結果、問題のUSP’565号特許のクレーム4の記載に少し明確さに欠ける記載があることに気づきました。第1の記載部分は、・an adjustable pedal assembly (22) having a pedal arm (14) moveable in force and aft directions with respect to said support (18)の中の“a pedal arm (14) moveable in force and aft directions with respect to said support (18)”の表現の部分です。この表現は、「サポート(18)に関してペダルアーム(14)が前後に動くこと」を言っています。その内容は、ペダルアーム(14)を含むペダルアセンブリ(22)が車両構造(20)に支持されるサポート(18)に回転可能に支持されている場合(’565号特許が示す内容)だけでなく、車両構造(20)に支持されるサポート(18)とは別の部材に支持されている場合(’565号特許が示さない内容)をも含むことになります。

 この第1の記載部分は、それ単独では大きな問題とはならないかもしれません。しかし、別の個所の第2の記載部分との関係から、不明確さを増幅します。第2の記載部分とは、特徴を示す記載部分の中の“while said pedal arm (14) moves in fore and aft directions with respect to said pivot (24) ”の表現の部分です。この表現は、「ペダルアーム(14)がピボット(24)に関して前後に動く間」を言っています。ピボット(24)はペダルアセンブリ(22)の回転支持部ですから、どうしたらペダルアーム(14)をピボット(24)に対して前後に動かすことができるかを理解することができません。すなわち、クレームの記載上、ペダルアセンブリ(22)の一構成要素であるペダルアーム(14)をピボット(24)に対して前後に動かすための構成が特定されていない、と言わざるを得ません。

 正直なところ、’565号特許の発明には、ペダルアーム(14)の前後動をガイドするガイドロッド(62)が必須ではないか、という新たな疑問が生じます。このような疑問から、非自明性の検討を前にして、’565号特許の発明については、非自明性の問題以前に記載不備の問題が内在しているのではないかという思いを抱いています。小生が懸念する“記載不備”が非自明性の判断にも何らかの影響を与えたのではないでしょうか。なお、’565号特許の発明には、ピボット(24)回りの回転モーメントが、ペダルの前後位置を変えることにより変化してしまうという難点があることに気づきます。

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