知財実務研究

KSR判決の再考-はじめに

 KSR判決といえば、特許実務家のだれもが知るキーワードです。ただ、一般的には、その判決の概要を知るにとどまる人がほとんどのようです。別に言うと、判決内容の実際的な意味まで理解する人は少なく、ましてや実務に生かすような検討まではなされていない、と見受けられます。この感触は、「KSR判決」というキーワードによるネット情報を探った結果です。

 すなわち、典型的な特許実務家がもつKSR判決とは、

(1) USP第6,237,565号特許、あるいはEngelgau特許のクレーム4に関した争いであり、
(2) 侵害を訴追する側は、排他的ライセンスをもつTeleflex Incorporatedおよびその子会社Technology Holding Company(これらをTeleflexという)、侵害を訴えられる側はKSR International Company(これをKSRという)であり、
(3) 一番の争点は、’565特許が、35U.S.C.§103、つまり、発明の非自明性要件をクリアするか否かであり、
(4) その争点について、地裁では、非自明性要件を欠き特許は無効という判断、CAFCでは、TSMテストから、逆に特許は有効という判断、そして、上告を受理した最高裁では、TSMテストは柔軟に適用されるべきという観点から、結果的に地裁と同様の特許無効の判断がなされ、
(5) 一般的に、非自明性要件の判断基準が、日本や欧州のレベルに少し近づいた
という印象を与える判決です。

 最高裁判決やそれに基づく論評を読んだとしても(主には、法的な観点から理解したとしても)、上のような(1)~(5)の知識を得ることはできるが、それらの知識を特許実務、特には非自明性あるいは進歩性(容易想到性)の判断に活用することは困難です。特許実務に有効に活用するためには、KSR判決が包含する具体的な事実、判断などを検討することが必要と考えます。いわば、KSR判決を特許実務に生かすための再考が必要のようです。

 そこで、
・’565特許の内容検討、
・関連する特許文献の内容検討、
・’565特許の非自明性要件の検討などを通して、
・非自明性要件あるいは進歩性要件の判断のポイント
を追求したいと思います。

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